第三話 伏兵
『先頭を切るのはやはりこのウマ娘、セイウンスカイ!』
『セイウンスカイがものすごいスタート!やはり得意の逃げに打って出た!!』
『シンボリルドルフ、ナリタブライアンあたりは3、4番手あたりでこれを見ていく感じ』
『グラスワンダーやエイシンフラッシュはやや後方』
『スタートはそれぞれ得意な位置を選んでいるようです!』
『果たしてここからどういった展開となりますか!』
『先頭セイウンスカイは今日も気ままに一人旅!』
『そこから3バ身ほど開けてシンボリルドルフら先頭集団』
『それを見るようにグラスワンダー』
『7番、8番がつづき後方にエイシンフラッシュ、他のウマも様子をうかがう』
『最後尾は12番………』
『………!?』
『あれ!?』
『ハルウララは!?ハルウララはどこだ!?』
『ハルウララの姿がない!いつも位置する中団から後方に彼女の姿がない!』
『バ群に隠れたか!?』
『いや、ここだ!!』
『ここにいましたハルウララ!!なんと!!』
『先頭を走るセイウンスカイ、その裏に隠れるように桜色の髪が靡いているっ!!!』
『なんと先頭!!逃げに打って出ましたっ!!』
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「ウッソでしょ……」
芝を踏みしめ、腕を小気味よく振りながら走るセイウンスカイ。
まだスタミナも十分のはずの彼女が、頬に一筋の冷や汗を垂らす。
「まさか、逃げで来るなんて思ってないじゃん…!」
隣を走るハルウララ。
こんな光景が有マで待っているなんて、想像すらしていなかった。
よく走っている。
よく、走っている。
適性が無いと言われていた芝のコースで、少なくとも私と互角。
いい速度で走れている。
ああ、けれど。
これはきっと、一瞬の煌きなのだろう。
「先頭の景色はね、そんなに甘いもんじゃないんだよ、ウララ…!!」
恐らくはバ群に呑まれるのを嫌っての作戦なのだろう。
だが、あまりにも短絡が過ぎる。
まずスタート直後に迫りくる登り坂。
ここをスタミナのロスを少なく走り抜ける必要がある。
もちろん、後ろのウマ娘たちを突き放す速度でだ。
それには力の入れ具合、速度の出し方、坂の上り方、そしてスタミナの消耗のコントロール。
繊細な技術が要求される。
「逃げる技術、ちゃんと磨いて持って来てからやり直すんだねっ!!」
セイウンスカイが、さらに加速する。
僅かに前を走るハルウララを抜き去り、二人旅から一人旅へシフトせんと、ひた奔る。
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「ふん…ずいぶんと面白い展開になったじゃないか」
先行集団を行くナリタブライアンは、目の前で起こる光景にわずかに喜色を見せた。
恐らくはセイウンスカイの一人逃げ。
それに惑わされぬように、己のペースをキープして終盤まで先行集団に。
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