ハーメルン
【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢
12 飛び出し、煌く

 ミーティングを終えて、最終レースのスタート地点へ向かうアイネスフウジンを見送る。
 俺の立てた作戦はすべて伝え終えた。
 事前にアドバイスしていた、走るのは1000mまで、というのも守ってくれていたらしい。
 これで、俺ができることは終わった。
 後は彼女次第。

「……トレーナーさん!…アイネスさんとはお話しできた?」

「私たちの走りが、いい影響を与えられていれば…よいのですが」

 一人に…いや、一人と一匹になった俺に、そのタイミングを待っていたかのようにファルコンとフラッシュが近づいてきた。
 二人とも先ほどまでは、レース終了後にトレーナーたちに囲まれてスカウトを受けていたところだったが、そこから抜け出してきたようだ。
 遠くに立つトレーナー方がこちらをじっと見ていることから察するに、すべての誘いを断ってきたのだろう。視線が痛い。

「やぁ、お疲れ様、二人とも。レース、実に見事だった。君たちの想いを受け取ったよ」

「…!ええ、雄弁に示したつもりです。私の想いを」

「ファル子もね、思い切り走れて…私の想いを見せられたつもり。…それじゃあ、トレーナーさん」

「ああ。……エイシンフラッシュ、スマートファルコン」

 二人に向き直り、正面から見つめる。
 より表情を真剣なものにして、俺は二人に想いの返答を。

「─────君たちを…スカウトしたい。君たちがトゥインクルシリーズで輝く、その手伝いを俺にさせてくれ」

「──はい、喜んで。共に、誇りある勝利へ」

「──うん!ファル子、がんばっちゃう!!」


 二人から、満面の笑顔による快諾を受けて。
 俺はこの世界線での、新たな愛バ達と契約を結んだ。




「…まぁこの後、もう一人増える予定なのですが」

「この節操なし☆ウマたらし☆かいしょーなし☆」

「急な温度差で風邪引きそうなんだが?」


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「それで……実際のところ、どうなんです?アイネスさんの調子は」

 最終レース、ゴール地点がよく見えるところに移動して、俺の右に並んだフラッシュが質問してきた。
 ニャー、と俺の代わりに返事をするオニャンコポンを肩からファルコンの腕の中に移動させつつ、俺は答える。

「正直なところ、ただレースをするだけならかなり厳しい。アイネスは自分で思っている以上に調整不足だ。いい脚は持ってるんだけどな…練習が足りてない。もし彼女がウォームアップで走りすぎていたら、それだけで後半スタミナ切れしかねないくらいにな。それは止めたけど」

 そう、現時点のアイネスフウジンは調整不足にもほどがあった。
 だから事前に声をかけて、ウォームアップで走りすぎるのを止めた。
 感情的な部分も加味して、走り足りないくらいでレースに臨んだほうが走りへの飢え(・・)が高まって勝率が上がると踏んだ。

「んー…いつもバイトで忙しそうにしてたもんね、アイネスさん。でも、本当に大丈夫かな…?」

 オニャンコポンをぽんぽんとなでながら、ファルコンが心配そうに視線をスタート地点、ゲートに向ける。

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