ハーメルン
転生したらアーサー王だった男がモルガンに王位を譲る話
軋む心を聞くお話
汚水の流れる音に紛れ。視界を妨げる闇に紛れ。鼻を塞ぐ臭いに紛れ。
悍しき蟲の群れが、何者かを貪る。
衣服を破り、肉を喰み、骨を噛む。内から、外から。
腕に残った膨大な魔力の結晶、令呪の所有権が一匹の蟲に移譲された。
もはや用は無し。やがて蟲の群れは姿を消し、下水道には静寂のみが残される。
(役立たずの雁夜とバーサーカーは処分した。令呪を一画使わされたのは痛いが、幾らでもやりようはある……しかし、やりようはあっても、表立って動くべきではないのぉ)
仮にもサーヴァントであるバーサーカーを使い潰したのには理由があった。純粋に勝ち目のない戦いで雁夜が藻掻き苦しみ、その道化ぶりを眺めて愉悦に浸る暇がなくなったのが一点。そしてもう一点が、ホムンクルス達への対処に利用する必要があることだ。
アインツベルンのホムンクルス製造技術は、時計塔にて錬金術の第一人者とされるユグドミレニアを児戯とするほどのもの。現行世界最高であり、錬金術の大家たる名声は伊達ではないと畏怖されている。戦闘用に調整されたホムンクルスは、純粋な性能だけなら短時間のみに限定してサーヴァントにも対抗し得る域に達している。そんなものと直接対峙する気にはなれなかった。
故に、アインツベルンのホムンクルスを排除するには、サーヴァントの力を借りるのが最も確実だ。そこで蟲翁は雁夜を操り、バーサーカーに令呪を用いて無謀な戦いを挑ませたのだ。全ては余剰令呪を手に入れるため――それさえあれば、他のサーヴァントを媒介にすれば新たな手駒を召喚してしまえる。そう、この蟲翁なら。問題はどのサーヴァントを、どうやって奪うかだが……。
(それは追々、運が良ければ、だ。……無理を押してはならん、拙速は身を滅ぼす)
なにゆえか冬木に侵入しようとしていた、フランソワ・プレラーティなる魔術師は撃退した。よもやプレラーティが己の盟友、青髭の現界を察知して襲来したとは翁にも想像できなかったが、少なくとも翁が健在の内は、彼奴が冬木に再来することはあるまい。
翁が思い返すのは、遠坂が召喚したあの黄金のサーヴァント。如何なる触媒により喚び出されたのかを知る翁は、アレがいる限りどう足掻いても無駄だと弁えていた。
(今回は捨てる他にない。次回以降の下準備に専念するとしよう)
そのためにアインツベルンの勢力を削ぐ。此度の戦果で頭の固い連中も、この戦術の有効さを思い知るだろう。さすれば今後の聖杯戦争で、アインツベルンはさらなる戦力の投入を行おうとするはずだ。そうなったら地力で劣る遠坂や間桐に勝ち目はない。故にアインツベルンの手勢を、今回でなんとしても削りに削るのがベストな選択である。
ど
(
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う
(
・
)
せ
(
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ど
(
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う
(
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足
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掻
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い
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て
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も
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此
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度
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の
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聖
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杯
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は
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完
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成
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し
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な
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い
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