ハーメルン
えんだーりりーず! ~リリィの秘密の日記帳~
12日目 悪趣味なマスク



 ファーデンのばか。デリカシーの無い人はサイテーってイレイェンも言ってた。


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 今日もまた、ファーデンの奴がやらかしてくれた。ひとまず順を追って書いていこうと思う。

 前日の日記でも少し触れたが、今日は禁域の探索を行った。禁域はただでさえ穢れが濃く、ただ滞在しているだけでも危険な領域だが、なんとも恐ろしいことに……ほんの僅かばかり足を踏み入れるだけでも、身体に尋常じゃない影響が出るほど穢れが濃い区域も存在している。

 幸か不幸か、我々は既に肉体を失った身だ。精神への影響はともかく、朽ち果てる体が無い分、多少は穢れへの耐性を持っている。

 しかし、生きているリリィはそうはいかない。故に、この禁域を探索する際はここで研究をしていた連中──もっと言えば、ファーデンが発明した特製のマスクを着用する必要がある。

 このマスクと言うのがとにかくひどい。センスの欠片もまるでない。みすぼらしいズタ袋のような見た目をしていて、まるで死刑執行人のような……まぁ、悪趣味でデザイン性が皆無な見た目なのだ。

 どこからどう見てもボロ布みたいなそれなのに、穢れから肺を守るという機能だけはしっかり働くというのだからタチが悪い。あんな状態でもしっかり役目を果たせるのなら、なぜもうちょっとマシなデザインにしなかったのかと問い詰めたくなる。いや、デザイン云々以前に、機能性の面から見てもあの形状はよろしくない。頭の上の無駄に余ったあの部分、いったい何の意味があるのだろうか?

 ともあれ、禁域の探索に必須となるあのマスクはあまりにもダサい。デザインセンスが壊滅的で、好き好んであんなものを着用する人間はおよそ真っ当じゃないと思う。必要なことだからしょうがないとはいえ、あんなものを被るリリィの姿に何度泣きそうになったことか。

 リリィ自身、言葉には出さなかったが嫌そうな顔を隠せていなかった。あのリリィにそんな顔をさせるということが、いったいどれほどのことかわかるか?

 前振りが長くなってしまったが、ここからが本番だ。

 前述した通り、件のマスクはファーデンが発明したものだ。そして、ファーデンは自身が作ったあのマスクを──あのマスクのデザインを非常に気に入っている。禁域でなくとも着用するくらいで、正直我々全員あのセンスは無いと思ってる。

 だけど、本来ならば着ける必要なんてないものだ。マスクである以上、息苦しさは感じるし視界も狭まる。デザインを気に入っていたとしても、四六時中ずっと着けているのは少々異常だと言わざるを得ない。

 だから、リリィが寝静まった後……たまたま何かのきっかけで、イレイェンがファーデンに問いかけたのだ。『もうすでに死んで穢者と化しているのに、なんでずっとそのマスクを着け続けているんだよ? 見ていて暑苦しいからたまには外したら?』……と。

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