13日目 最後の日記:リリィの夢
今日は久しぶりに、リリィと黒騎士が初めて会った聖堂のほうまでいきました。別に、これといって用事は無かったんだけど、なんだか無性に行きたい気分になっちゃったの。だから、しょうがないよね。
……もしかして、これがホームシックってやつなのかなあ? あそこがリリィのお家なのかって言われると違う気もするけど、でもあそこ以外にどこかあるのかって言われると、うーんってなっちゃうし……。
リリィのおねえちゃんたちは、この国のあちこちに散らばって暮らしていたみたい。おかあさんの部屋で暮らしていたおねえちゃんもいたみたいだけど、そういう意味ではリリィのお家はあの大きなお城になるのかも!?
お城、お城かあ。お城でみんなと一緒に暮らせたら、きっとすっごく楽しいんだろうなあ。
ウォークインクローゼットでシーグリッドと一緒にお洋服を選んで。
ドレッサーの前でシルヴァに髪を梳かしてもらって。
ゲル爺はね、ぽかぽかのバルコニーでお昼寝しているの。
イレイェンは図書室でずーっと本を読んでいて。
ユリウスおじさんは修練場で訓練かな?
ウルヴくんは中庭の花壇の所がお気に入り。
ヘニールさんは最強の守衛さんで、お城を守ってくれたりしちゃって!
ミーリエルはキッチンで美味しいクッキーを焼いてくれるの。もちろん、紅茶も一緒にね。
ファーデンは……よくわかんないけど、王様の椅子に座ってゲラゲラ笑っていると思う。
──それでね、みんなで毎日、一緒に大きな食堂でご飯を食べるの。温かい暖炉と煌めくシャンデリア……食べきれないくらいのご馳走がいっぱい机に載っていて、みんなで笑いながら、ああ、今日も楽しかったねーって……明日もきっと楽しくなるよねーって笑いながら、幸せな一日を振り返るんだ。
ああでも、お城だと逆に大き過ぎちゃうのかなあ。あんなにおっきなテーブルだと、みんなで一緒にご飯を食べてるって感じは全然しないかも。お部屋も大きいしたくさんあるし、それだとちょっと、寂しいかもしれない。
……だったらリリィは、お城なんて無くもいいや。みんなと一緒に過ごせるなら、どんな所でもいいの。ミーリエルやゲル爺にはぎゅうぎゅうになっちゃってちょっと申し訳ないけど、この聖堂で暮らしていくのでもいい。
……全部が終ったら。そうしたら、みんなで過ごせるところを探そうかな。この果ての国の外に探しに行くのもいいかもしれない。ううん、いっそのこと、リリィたちだけで新しいお家を作るって言うのも悪くないかも。
うん、そうしよう。自分たちで自分たちのためのお家を作っちゃうだなんて、リリィはもうおねえちゃんを通り越して完全にオトナなおねえさんじゃない!?
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