ハーメルン
ベル・クラネルの治癒魔法の使い方は間違っているだろうか?
黄昏の館に来たのは間違っているだろうか?
「………もうすんだ」
ベートはそう言って立ち去った。ベルが手をヒラヒラ振るのを横目で見て、フンと鼻を鳴らした。
「では、案内しよう」
「はい、お願いします」
素直な子だ。ベートの発言も譜面通りに受け取らず、本質を見抜き懐いている。
元々は【ロキ・ファミリア】に顔を出していたということだが、彼が来てくれればベートと他の団員との架け橋になったかもしれない。
追い返した門番の調教期間をもう少し伸ばすことにした。
「ああそれと、ベートはああ言っていたが私を
母親
(
ママ
)
とは呼ぶなよ?」
リヴェリアの案内のもと、団長室へたどり着く。リヴェリアがノックすると入ってくれ、と声がかかった。
「昨日ぶりだね、ベル・クラネル。来てくれてありがとう」
「こんにちは」
部屋にはフィンの他にガレスやロキが居た。
「ああ。ベルと呼ばせてもらっても?」
「はい、構いません!」
ベル・クラネルの印象は、人が良い。いや、冒険者という職業を思えば良すぎる、といった感じだろう。
親しげな笑みの下で、フィンは冷静にベルを観察する。都市外からきた得物なしとはいえベートをくだせる冒険者。しかもLv.1と来た。
ありえない。都市外で鍛え、
改宗
(
コンバージョン
)
させたと言われたほうがまだ納得できる。
「今日は神ヘスティアは来てくれなかったのかな?」
そうなるとヘスティアは外部ファミリアと繋がっていることになる。ロキはそれはないやろ、と言っていたが。フィン・ディムナは神の感覚を信用こそすれ、信頼はしない。神とて地上では零能にして、心を持つ。他者の裁量は予測するものであって信頼するものではない。
まあその場合様々な【ファミリア】に顔を出したことが説明つかないが。
「はい、ロキ様と口喧嘩して仲直りを邪魔しちゃうかも、って……必要ないけど謝罪したいなら、時間と場所を言ってくれれば、時間をとるそうです」
「そうか。なら、謝罪は別の機会にさせてもらうよ。今は不要だと言ってくれた女神に感謝を……そして、門番の件、ミノタウロスの件、昨夜のベートの件。本当に申し訳なかった」
フィンはそう言って頭を下げ、ベルが慌てる。
「だ、大丈夫ですよ! 門番もベートさんもぶっ飛ばしましたし、ミノタウロスのあれはボーッとしてた僕にも非が………それに、ベートさんとは仲直り出来ました」
「…………やっぱり冒険者なんだなあ」
「…………?」
拳で解決するあたり、冒険者らしい冒険者だ。見た目は純朴で歓楽街に迷い込んだら年上の女達に食われそうな容姿なのに。
「とはいえ僕達が君に迷惑をかけたのは事実。ギルドから通達が来てると思うけど、街の修理費はこちらが負担しよう」
「い、いいんですか!?」
正直助かるとベルは喜んだ。フィンの目から見ても、その気持ちに嘘はないだろう。
「昨日の件の謝意だ。ミノタウロスと、門番の件はまた別………そうだね、君ほどの強さなら上層じゃ
経験値
(
エクセリア
)
がたまらないだろう? かと言って、知識のないまま中層は危険だ」
[9]前
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:2/4
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク