欺き騙すがスリザリンの流儀
《table:#000000》[[《b》《color:#808080》日刊予言者新聞 創刊記念連載 名著特別連載第四回
第二章 シリウス・ブラック
前章では魔法界における重大な事件を扱い、大筋を確認した。その内容は隠居をしているようなよっぽど世情に疎い者を除き多くの魔法使いにとって一般的に知られた出来事である。
本書の目的は、一般的な魔法界の善良なる市民達の知るところとなった事件の詳細を語る事である。私は語ることのできる者の一人として、この歴史的な境界線を本書に記す事とした。そして、第一に取り上げるにふさわしい人物こそ、最強最悪の殺人鬼と呼ばれ、今やもっとも勇気ある魔法使いの一人とされるシリウス・ブラックである。
この不幸な行き違いにより囚人となっていた英雄が、なぜ難攻不落と言われたアズカバンから逃れることができたのか?ブラックの脱獄が世間に知れ渡ったとき、人々はブラックが力ある闇の魔法使いだと信じ、震えあがった。疑いが晴れた現在となっても、ブラックの脱獄は闇の魔法によるものだと主張する者も多い。しかし、本書が出版されることでそのような馬鹿な事を口走る者はいなくなるに違いない。彼がアズカバンから逃れることができたのは、彼の正義感の強さと幸運の連続によるものである。
ブラック本人は、自らがアズカバンの独房で完全に正気を失うことが無かった理由を、無実の罪で収監されていたことに対する強い怒りによるものだと語っている。ディメンターは人々の幸福な感情を奪い、恐怖や痛みのような感情を増幅させて餌とする恐るべき怪物である。通常であれば幸福感の喪失で絶望にさいなまれ、精神的にも牢獄に囚われるが、ブラックの強い正義感から沸き上がる憤りは彼の精神を10年という長い年月の間守っていた。
とはいえ、アズカバンの環境は彼を疲弊させた。かろうじて正気を保っていたブラックを奮起させたのは監獄に視察に訪れたコーネリウス・ファッジである。
ファッジは長期間監獄にいたブラックがまともに会話をできる状態を維持していたことに驚嘆した。さらに、我らが愛すべき魔法大臣は囚人を哀れに思い、気晴らしに自分が持っていた新聞を彼に渡したのである。この時、新聞一つがまさか魔法界の歴史を変える鍵になるなどと誰が思うであろうか。
ブラックは魔法大臣から受け取った新聞から、ある一家が宝くじに当選したということを目にした。記事には、その家族の当選金の用途と、一家の子どもたちがホグワーツに通っているという情報が書かれていた。信じ難いことに、その珍しくもない事実がシリウス・ブラックを突き動かしたのだ。
イギリス魔法使いたちにとってホグワーツという響きが特別であることは言うまでもない。ブラックは自身の若い頃の記憶が呼び起こされると同時に、ホグワーツのダンブルドアに自分の知ることを話さなければならないという使命感が沸き起こった。
脱獄の詳細についてブラックは覚えていないと語っている。長年投獄されていたブラックは檻をすり抜けられるほどに痩せ細っていた。おそらく、その身で牢を抜け出してきたのだと本人は語っている。
闇の魔術に対する防衛術を専門とする著者は、この時のブラックをこう考察している。長年の監獄生活と、急激な感情の変化により、脱獄時のブラックは一種特殊な精神状態にあったのである。
ディメンターは目が見えず、彼らの餌である人間を、人間特有の複雑な感情と思考を読み取って認識している。そのため、ディメンターは複雑な思考を持たない動物等に対しては認識が出来ないという弱点がある。とある記録によれば、猟犬を連れた魔法使いがディメンターに出くわしたとき、犬たちがディメンターに襲い掛かり見事に撃退したというのだ。
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