ハーメルン
【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話
#12 ファースト・エンカウント part3
「なら……問題ないんじゃね?」
「うん、付いていく」
無理矢理、予定を歪めている事に罪悪感を持ちながらも私は付いていく事にした。
ネッドは嬉しそうな顔をしていたし。
分かる。
オタクとして同じ趣味の人間を見つけると嬉しくなるよね。
ピーターは……何だか、不思議な表情をしていた。
嬉しそうな……恥ずかしそうな……なに?
「ピーター、どうかした?付いて行かない方がいい?」
「いや、全然そんな事ないよ。僕もミシェルが一緒に来るのは賛成かな」
じゃあ何で、そんな顔をするんだ?
私は首を傾げた。
◇◆◇
僕の前には、ミシェルとネッドがいた。
映画が見終わった後、僕と彼らは現在、映画館前の喫茶店に来ていた。
僕はコーヒーを。
ネッドはアイスティーを。
ミシェルは……パフェを目の前に置いて。
プリンとメロンとクリームを、もりもりと頬張っていた。
……まるでリスみたいだ。
そういえばリスのスーパーパワーを持った女の子がいるって、スタークさんが言っていた気がする。
すっごい出っ歯で訛った言葉を話す凶暴な女の子らしい。
スタークさんのスーツも噛まれてお釈迦になったとか……。
いや、絶対ミシェルではないな。
「凄く面白かった」
「それは良かった……ネッドは?」
「俺も面白かったよ。特に主人公の病的な悪への怒りと、暗闇の描写。影と恐怖を象徴する黒いスーツの……」
ネッドが語り、それをミシェルはうんうんと頷く。
何だかんだ、僕ら三人……あと、この場にいないグウェンも含めて仲が良いらしい。
……でも。
『私が、悪い人間だから』
『ピーター達と仲良くする資格なんてない』
今朝のことを思い出す。
ミシェル・ジェーン。
彼女は一ヶ月前にクイーンズに引っ越してきた僕と同い年の女の子だ。
表情を作るのが少し下手で、突拍子もない事をする女の子だけど。
頭が良くて、気配りができて、優しくて。
困ってる人がいたら、さりげなく助けに行こうとする。
完璧じゃないけど、それがより可愛いような。
……優しくて可愛い、善い女の子だ。
だからこそ、彼女の言う『悪い人間』と言うのが分からない。
あの時、ミシェルは。
……悲しげで、とても辛そうな表情をしていた。
何かが彼女を苦しめていて、何かが彼女を『悪い人間』だと思わせている。
それを分からない歯痒さと、話してくれない悔しさ、それ以上に彼女を救えない僕の無力さへの怒りが僕の胸を満たした。
僕は……昨日、謎の悪党……黒いスーツに赤いマスクの男に負けてしまった。
スパイダーマンとして、助けられる筈だった人間を助けられなかった。
……僕の目の前で死んでしまった叔父さん、ベン叔父さんの言葉を思い出す。
『大いなる力には大いなる責任が伴う』
これは僕に対しての戒めであり、ヒーローとして活動するための決意でもある。
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