ハーメルン
【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話
#13 インサニティ・アイズ part1
子供の頃。
危機的な困難に陥って……そう。
例えばテロリストが学校を占拠して、自分一人の機転で切り抜けるような……。
そんな幼稚な妄想をした事はないだろうか?
私は…………いや、それはどうでもいい。
ただ、そういったシチュエーションに少しは憧れてしまうのが男の子だ。
……いや、今は女の子なのだが。
最近、精神が肉体に引っ張られているようで、女の子らしい仕草をする事に違和感を覚えなくなったり、人並みにイケメンを見るとテンションが上がるようになってしまった。
幼い頃はこんな事なかったのに……何故だろうか。
思春期なのか?私は?
閑話休題。
とにかく学校とか、身近な場所に危機が訪れる妄想と言うのは、結構ありきたりな物で。
私の頭上で机が宙を飛んだ。
背後の白板に命中し、破壊音が耳を貫く。
危ない。
実際の話、そういう身近な場所で非日常な出来事に憧れるのは平和な世界で生きてきた人間の発想だ。
……血みどろな生活を続けている人間からすれば、平和な日常を脅かす非日常など疎ましく思えど憧れる事なんてない。
机の下で縮こまりながら、私はそう結論づけた。
そっと、顔を出して外を覗く。
そこには怒りに表情を歪めたトカゲ人間。
全身が緑の鱗で覆われ、顔はトカゲ。
凄まじい力を予想させる筋肉、それによって膨張した肉体。
体長も2mは超えているだろう。
私は彼を知っている。
『リザード』と言う
悪役
(
ヴィラン
)
だ。
ここは理科室。
大きな横並びの机に隠れて、私は息を殺していた。
正直な所、あの程度のパワーであれば超人血清によって肉体強化された私と互角だ。
戦闘技術に差がある以上、普段であれば難なく殺す事が出来る。
だが、ここにはスーツもなく、学校の外にはクラスメイトが避難している。
私が戦闘を行えば、面倒な事になるのは火を見るより明らかだ。
『出てこい!クソ餓鬼!ズタズタに引き裂いてやる!』
大きな声でリザードが吠えている。
うーん、リザードは全身がトカゲのような……二足歩行するトカゲのような外見をしている。
という事は口も喉も人間のものとは異なる筈だ。
あれは一体、どう言うメカニズムで言葉を発しているのだろうか。
また、机が投擲される。
幸いにも私の隠れている位置とは離れていたので、そのまま息を殺して耐える事とする。
私が何故こんな目に遭っているか。
何故、学校に
悪役
(
ヴィラン
)
がいるのか。
それを思い返し、私は右手でこめかみを押さえた。
◇◆◇
気付いたのは、今月の初めだったか。
ミッドタウン高校にはアドバンスクラスと言う、選択式の専門的な授業があって、2年生になれば生徒がやりたい事を選んで受けるようになっている。
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