ハーメルン
【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話
#18 ショック・ユア・ハート part2

つえー、こえーってのが大事だ。

相手をビビらせときゃ無駄な争いもしなくて済む。
自分へ有利に物事が進む。

椅子にドカッと座り込む。


「……ショッカー殿、今回の任務だが……もう一名、我々以外に外部の人間が来る。頼む、くれぐれも不躾な態度は……」

「あ?オレ様以外に雇ってんのかよ!オレ様一人で充分だっつーの!」


ビビる男にオレは声を荒らげた。

つーか、聞いてねェし。
んだよ、オレ一人じゃ信用なんねーってか?

舐めた態度にムカついて、オレは言葉を重ねる。


「誰を呼んだか知らねーが、オレ様がいれば万事上手く行く!足手纏いになるぐれぇなら邪魔だぜ」


オレがそう言い切ったと同時に、部屋の扉が開いた。

丁度良い時に来たぜ。
どんな面してるか拝んでやる。

オレは椅子の上から目線を向けて……ソイツを見た。


鮮血のように鮮やかな赤いマスク。
夜を煮込んだかのような黒いスーツ。

正直に言うぜ?
初めて見た奴だ。
初対面、見た事ねー面した奴だ。

だが、その姿の『噂』は知っていた。


レッドキャップ。


フィスクの下で働いてる奴なら、殆どの奴が知っている。
裏切り者、足手纏いをブチ殺しに来る暗殺者だ。
血も涙もなく、慈悲もなく、仲間だろうが何だろうがフィスクに敵対する奴は絶対殺す暗殺マシーン。

任務の遂行率は100%近ぇらしい。
少なくとも、オレが聞いた話では「失敗した」っつぅ話は聞かねぇ。

絶対に狙った獲物は殺す。
回避不能の弾丸みてぇな奴だ。

だがその知名度の割に、姿を見た奴は少ねぇ。
そりゃそうだ。

見た奴の殆どがブッ殺されて、この世に居ねぇからだ。

知ってるか?
フィスクの部下を一番殺してるのはレッドキャップだって噂があるぐらいだ。

誰も彼もがビビっている。
フィスクを裏切ればコイツが殺しに来るって、知ってっからだ。


無意識のうちに、オレは姿勢を正してた。

ヤベェ。
コイツはオレより『上』だ。

ビビるオレを前に無機質な赤いマスクが、オレの方へ向いた。
外からは顔も見えねぇし目線も見えねぇが、オレの事を見てるって事だけは分かった。


『随分な言い様じゃないか……ショッカー。どうだ?足手纏いになるか……試してみるか?』


男か女かも分かんねー声で、そう言った。

……あ?
何でレッドキャップがオレの名前を知ってんだ?
身体の熱が急激に冷めていく感覚に襲われた。

……マスクに目も鼻も口も無ぇ。
表情が無ぇ、声色も分からねぇ。
何を考えてるか全く分かんねぇ。

未知は恐怖だ。
目の前にいるのが人間だとは思えなかった。
言葉の通じねぇ猛獣の檻にブチ込まれたかのような恐怖だ。

オレは慌てて椅子から立ち上がった。


「じょ、冗談だって!アンタだって知らなかったんだよ、オレは。いや、アンタなら安心だ、ハハハ……」


ダサいと思われようが、舐められようが、それでもレッドキャップの機嫌を損なう方が怖ぇ。

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