ハーメルン
【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話
#26 ボンズ・オブ・モータリティ part5
その日、僕はあんな大きな……僕にとっては大きな、大きな事件が起きるなんて知らないまま……いつも通り、パトロールをしていたんだ。
「お婆さん、もう落としちゃダメだからね!」
「えぇ、まぁ、ありがとう、スパイダーマン」
財布を落とした老婆の代わりに、財布を探してあげたり。
「はい、これ、ちゃんと返したからね」
「ありがとう!本当に……返ってこないと思ったわ!」
鞄をひったくられた女性を助けたり。
「ありがとう!」
車に轢かれそうになっていた子供を助けたり。
銀行強盗を捕まえたり。
看板にペンキを塗るお兄さんの手伝いをしたり。
事故を起こした車から運転手を救出したり。
そうして気づけば、空は暗くなっていた。
あぁ、人助けに集中し過ぎてたみたいだ。
休みの日は、一日中、人助けをしている事も少なくはない。
だから、ニューヨークの人達は僕の事を「親愛なる隣人」と呼んでくれている。
『大いなる力には、大いなる責任が伴う』
……死んでしまった僕の叔父の言葉だ。
強い力を扱う者には、責任がある。
自分だけのためではなく、世のため、人のために使っていかなきゃならない。
何より、僕が「何もしない」事を選択した所為で、誰かが不幸になってしまったら……それこそ、僕は耐えられないや。
それに。
人助けは嫌いじゃない。
感謝されたり、褒められたり、そう言うのって凄く気持ちいいからね。
それもあるかも。
……はぁ。
今頃、ミシェルはどうしているだろうか?
最近、僕は一人の女の子がずっと気になっている。
心ここに在らず……とまで行かなくても、暇な時にふと顔が思い浮かんでしまう程に。
それほど、彼女は魅力的だった。
決定的に感じたのは先週……二人でケーキを食べた時かな。
僕は彼女との待ち合わせに遅刻してしまって……スパイダーマンとしての活動だったけれど、それでも彼女はそんな事を知らないのに、僕を許してくれた。
『ピーターが何の理由もなく、約束を破るなんて思ってないから』
そう、言ってくれたんだ。
彼女は僕が隠し事をしているのを分かった上で、それでも暴こうとせず……怒る訳でもなく……許容して、微笑んでくれた。
彼女は寛容で……それで……。
僕は、彼女に恋をしたんだと、はっきりと……白黒のシルエットぐらい、はっきりと確信したんだ。
そんな彼女は今日、友人……ちょっと意地悪だけど優しいグウェンとショッピングに出かけてる。
いや、出掛けて「いた」かな?
流石にもうお開きになってると思う。
盗み聞き……じゃあなくて、偶々耳に入った話からすると、ミシェルが「女の子らしい服を買いに行きたい」ってグウェンに言っていた。
女の子らしい……?
と思ったけど、そう言えばミシェルはラフな格好が多かった。
シャツとズボン、それかショートパンツ……って姿がすごく多い。
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