ハーメルン
【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話
#42 ブラン・ニュー・パワー part1
そわそわと、僕、ピーター・パーカーは落ち着かず辺りを見渡した。
ガラス張りの屋根。
外も明るいのに、それでも発光している電灯。
学校の体育館ぐらい広い部屋。
材質も分からない白くて滑らかな壁。
全体的にどこか芸術家の手が入ったような曲線がある。
つまり、普通の部屋ではない、と言う事だ。
そして、普通の部屋ではない場所の主も普通ではない。
僕は椅子に腰掛けて、その人を待っていた。
白塗りの壁に線が入って……開いた。
それが自動ドアだった事に今気付いて、開かなければ壁と一体化しているのだろう。
普段使いはしにくそうだな、なんて思った。
しかし、部屋の外から入って来たのは、僕の待ち人ではなかった。
中腰になっていた腰を、また椅子に下ろす。
そもそも入って来たのは人ですらなかった。
ロボットだ。
足の代わりに3つのタイヤがあり、上はアーム一本だ。
机のような取手にはグラスが乗っている。
そのロボットはゆっくりと僕の方へ走って来て、そのグラスを差し出した。
「あ、どうも……」
そう言ってグラスを手に取る。
……黒い、炭酸飲料だ。
多分、コーラ。
いや、十中八九コーラだ。
『こちらはコーラです』
ほらね。
目の前のロボット、ジャービスが喋った。
どう見ても前時代的なロボットだけど、実際は最先端のAIによって動く執事ロボットだ。
この目の前のロボットにAIが搭載されている訳ではなく、本体のスーパーコンピューターと通信し、遠隔操作しているのだ。
僕はコーラを一気に飲んで、グラスをジャービスに返した。
「それで……スタークさんは──
「待たせて悪いね。少し忙しくて」
そう言って少し大きな……自己主張の激しい声の大きさで部屋に入って来た。
年齢は40歳と少し。
髭を短く生やしていて髪も短く整えている。
黒いスーツ姿で、白いカッターシャツ。
だけど、首元にネクタイはなくて第二ボタンまで開けている。
律儀さと、自由奔放さ、その二つが容姿からも見てとれる。
彼が僕の待ち人。
トニー・スタークこと、『アイアンマン』だ。
『アイアンマン』。
ヒーローチーム『アベンジャーズ』の実質的なリーダーの一人で、天才科学者かつ、大企業『スタークインダストリー』の社長だ。
自作のアーマースーツを着て、『アイアンマン』として活動をしている。
僕の尊敬する先輩ヒーローだ。
僕をアベンジャーズに一時参加させたり、正体がバレないよう誤魔化してくれたり、学校の資金援助をしてくれたり。
親のいない僕にとって「父」……ではないにしろ、保護者みたいに思ってる。
一方的にだけどね。
「スタークさん!」
僕は立ち上がろうとして──
「あー、どうどう。ステイ、ステイ。ピーター、僕は男と抱き合う趣味はない」
右手をプラプラとさせながら、スタークさんが僕の前に立った。
指をパチン、と鳴らすと足元の床が開いて椅子が迫り上がってくる。
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