ハーメルン
【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話
#43 ブラン・ニュー・パワー part2

6月末。
少し気温が高まってきて、暑くなってくる季節。
空は快晴だが、照り付ける太陽は鬱陶しいぐらいだ。

ふと、端の席にいるミシェルを見ると……太陽を眩しそうに目を細めて睨んでいた。


「それじゃあ夏季休暇の間も……あまりハメを外さないように。それと、夏期旅行の集合時間には遅れないように!」


眼鏡をかけた長身の教師が、ホワイトボードの前で号令をかけた。
生徒達は各々、席の横にかけていた鞄を取り出して教室から出て行く。

……明日から夏季休暇だ。
7月と、8月まで。
合計二ヶ月の休みだ。

休みの間に夏期旅行と言う、教師と、学年の生徒で旅行するイベントがある。
今年はフロリダ州のマイアミ。
そして、マイアミと言えば『マイアミビーチ』……つまり海だ。
夏に相応しい旅行先だ。

旅行時の班メンバーは割と生徒間で自由に決められるため、僕とネッド、ミシェルとグウェンの四人だ。

グウェンはまだ復学していないけど……夏期旅行までには帰ってくると言っていた。
……元気になってると良いけど。

ネッドが車椅子の押し方と何とか、その辺を勉強していたので僕は感心していた。
彼女に不自由させまいと言う、ネッドなりの気遣いのようだ。

僕もそれに倣って、介助について勉強させて貰った。
ただ……トイレとか、お風呂とか、その辺はミシェルに頼む事になりそうだ。
それを言ったら、グッとサムズアップしていた。
やる気は十分あるらしい。

みんな、良い友人だ。
僕は友達に恵まれてるな、なんて思った。


さて、それはともかくとして。


「ピーター……助けてくれよ……」


そう言って、僕の机の前で情けない顔をしているのは。


「ネッド……」


ネッド・リーズ、その人だ。


「夏季の課題、一緒にやろうぜ……?な?」


夏季休暇には宿題が付いてきている。
とは言っても、それほど量は多くない。
僕は頑張れば、一日で終わるぐらいの量だ。

ただ、ネッドは三日ぐらいかかるらしい。
これは恐らく、勉学への理解度の差だ。
まぁだってネッドは……学年では中の下ぐらいなのだから。


「……見せるのは無しだからな?」

「わ、分かってるよ……?」


いや、これ絶対分かってないだろ。
課題を見せてもらおうと姑息な事を考えている友人に呆れつつ……ふと、ミシェルが席から居なくなっている事に気づいた。

……あれ?もう先に帰ったのだろうか?


「ネッド、ミシェルが何処に行ったか知らない?」

「……は?ピーター、ミシェルなら──

「後ろ」


唐突に背後から声が聞こえて、僕は振り返った。
ぼすん、と何かに当たって……それがミシェルだった事に気付いて僕は席から転げ落ちそうになった。


「わ、うわ!ご、ごめん……」

「ん……?何か謝る事、あった?」


そう真っ直ぐな目で見られれば……僕は黙らざるを得なかった。
愛想笑いをしていると、ミシェルが僕が座ってる席の側面に移動してきた。

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