ハーメルン
【本編完結】レッドキャップ:ヴィランにTS転生した話
#44 ブラン・ニュー・パワー part3
二週間後。
夏期旅行の初日……そして、グウェンが帰ってくる日だ。
私はそわそわとしながら、ミッドタウン高校の校門で待っていた。
キョロキョロと周りを見渡すが、グウェンが来る気配はない。
ピーターとネッドは先にバスへ向かっていた。
今日は朝から集合して、学校の貸し切ったバスに乗って全員で移動する。
……二人で良い席を確保してくれてるらしい。
グウェンからの連絡は無かったけど、父のジョージさんからは連絡があった。
予定通り来れるらしい。
グウェンはスマホも持っていないらしく、ジョージさんも入院先の病院から連絡を貰ったとか、なんとか。
……スマホは、グリーンゴブリンとのゴタゴタで壊れたとの話だ。
なので今、私はジョージさんから預かったスマホも持っていた。
これはジョージさんが買って、契約も更新したスマホだ。
グウェンの新しいスマホで、ジョージさんからの退院祝い。
私はそれを渡す大役を承ったのだ。
予定時間から五分を切った頃……真っ黒な高級車が校門の前で停まった。
窓ガラスはマジックミラーになっていて、中は見えない。
……もしかして、グウェン?
そう思って、でも勘違いしていたら恥ずかしいので……焦ってる様子を見せないようゆっくりと歩いて近付いた。
ガチャリ、と音がして高級車のドアが開いた。
車は防音設備がしっかりしていたみたいで、ドアが開いた瞬間……声が聞こえた。
男性の声と、聞き覚えのある女性の声。
それは……。
「グウェン……」
車から降りようとするグウェンに、思わず駆け寄ってしまった。
……そこには事件前みたいな、健康そうなグウェンの姿があった。
杖も持っていないし、車椅子もない。
「グウェン!」
少し、大きな声で話しかけてしまった。
そして、思ったよりも声が大きくて恥ずかしくなってしまった。
そのまま抱き着こうとして──
「あ……ミシェル!久しぶり!」
「わぷっ」
突然、視界が真っ暗になった。
それがグウェンによって抱きしめられていたのだと、解放されてからようやく気付いた。
夏なのにタートルネックのシャツを着ている。
頭には黒いカチューシャを付けている。
短パンで涼しそうな格好をしているからこそ、首まで覆うシャツに違和感を感じていた。
「ひ、ひさしぶり」
「ミシェル〜!会いたかったよ、ホントに!」
ガシガシと頭を撫でられる。
「う、ぐ、ぐ」
首が左右に揺れて、まともに喋る事も出来ない。
……何だか。
長期間離れていた所為なのか、前よりもスキンシップが激しくなっている気がする。
いや、そもそも。
「グ、グウェン?」
「なに?どうしたの?」
私の頭に手を置いたまま、グウェンが首を傾げた。
「足、大丈夫……なの?」
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