第9話 さようなら流魂街
落第者は"お帰りはあちらです"されるそうですが、合格者は必要な書類の記入をしていきます。霊術院には院生寮もあるので、希望する場合は入寮手続きなんかもします。
流魂街出身だと瀞霊廷に家なんてありませんし、瀞霊廷出身でも家が遠くて入寮を希望する者もいるので。
それらが終わったら最後に身体測定です。
霊術院生になった者は、学生服のように院生袴というものの着用が義務づけられます。
ですが院生のサイズは個人個人違うので、それぞれの身体のサイズに合わせて調整する必要があります。
そのために身体測定が必要になるわけです。
大きくてブカブカならまだしも、小さくて着られないなんて間抜けですから。
ましてや私は身体が大きいので、下手すれば男性サイズでも合わないかもしれません。
おっかなびっくり測ってみたところ、なんと吃驚。身長が六尺一寸と言われました。
なるほど、そりゃ流魂街の男性よりも大きかったワケです。
あ、ちなみに院生袴のデザインも見せてもらいました。男性は紺、女性は赤の袴になっていて、結構可愛らしい感じでしたよ。
全てが終わると、最後に割り符を貰いました。
この割り符が合格者の証だそうです。このまま授業開始まで院生寮で暮らしてもいいし、一旦戻って支度を整え直してくるのもOK、とのこと。
そうですね……じゃあ私は……
……え? 身長はわかったけど胸囲は幾つだ? ……それは秘密で。
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「それでは師匠、行ってまいります」
「うむ、達者でな」
師匠の手によって、瀞霊門はまるでシャッターか何かのように持ち上げられており、その向こうには、流魂街よりも立派な建物が並んでいます。
数日前の焼き直しのような見た光景。けれど決定的に違うのは、私が霊術院に合格しているということと、見送りの人数があの時の比ではないほど多いことです。
あの後、合格の報告をみんなにすべく一旦流魂街に戻ることにしました。
門を通るので師匠に真っ先に報告を。そして酒屋に戻って女将さんたちにも合格したと告げると、蜂の巣を突いたような大騒ぎになりました。
その日は合格祝いと称した馬鹿騒ぎが夜遅くまで続き、合格を祝う声と別れを悲しむ声でいっぱいでした。何しろみんなで愉しもうということで黒稜門の近くに酒樽や料理を運び込んで師匠も合わせての大宴会です。
私も何度も酒を勧められましたが、丁重にお断り続けました。明日にはまた璃筬を立つ身なので酔うワケにもいきませんしお酒弱いですし。
ご主人と女将さんにお別れを済ませ、何度も身体を触られそうになるのを躱しながらその日の夜は更けていきました。
そして翌日。
霊術院試験に挑むときのように見送られ、激励の言葉を投げかけられながら、再び瀞霊廷へと歩みを進めます。
けれども私の胸は、あの時には感じなかった新たな期待でいっぱいでした。
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