ハーメルン
イヌ子さんのホラ吹き。《あの時の嘘、ほんまやで〜》
第十二話 「プレゼントと部活動」
「「メリークリスマス」」
テントから各々プレゼントを持ってきた後、温かい飲み物を淹れ直したカップで乾杯をする。
お風呂上がりにみんなが戻ってきた時の為に、お湯を多めに沸かしておいて正解だった。
「ふ〜、なんだか不思議やわぁ」
「何が?」
ココアを飲みながら、あおいさんが言う。
「去年の今頃なんて受験で忙しかったのに、まさか彼氏が出来て、一緒にこんな風に過ごせるなんて夢にも思ってへんかったな〜って」
「そうだね、俺もだよ。親の転勤で引っ越しが決まってバタバタしてた時期だったし。去年の俺が今の自分を知ったら驚くと思う」
今年入学したとはいえ、知らない環境での進学はもはや転校と差ほど変わらない。
引っ越し自体初めてだったし、友達が出来るかも不安だったのに、彼女が出来るなんて。
人生何があるか分からないな。
「……」
「……」
『…あのっ』
少し間が空いて、声が重なった。
「あおいさんからどうぞ」
「いやいや、あらたくんから先にどうぞ」
「いえいえ、」
「いやいやいや、」
お互いに譲り合いながら、何往復かしたのちに俺が先に用件を伝える。これがThe日本人の譲り合いの精神。
おそらく、互いに同じ事を言おうとはしていたんだろうけど。
俺は、足元に置いていた包装されたプレゼントをあおいさんへと手渡した。
「改めて、これクリスマスプレゼント」
「ありがとう。私も、はい、プレゼント」
そうして、2人でプレゼントを交換する。
俺もお礼を言ってあおいさんから受け取った。
「やっと渡せた〜」
安堵の声を漏らす。
緊張から解放された。そんな感じがした。
「私もなんか、肩の荷が降りたような気がするわ〜」
「俺も。正直朝からいつ渡そうとかずっと考えちゃってたからさ」
「あき達には感謝せんとな〜。さすがに皆んなの前やと、ちょっとなぁ」
「あーんとかしてきたのに?」
「それはお互い様やろ〜」
肩を並べて今日起きた出来事を押し付け合う。
「せっかくやし、開けてもええ?プレゼント」
「もちろんいいよ」
そして、あおいさんが先に包装された包みを開けて、中からプレゼントを取り出した。
「わぁっ!可愛い手袋や!」
包みの中からは、モフモフとした茶色い手袋。
ウールの生地を使い、手首には小さなリボンがあしらわれたデザインの物だ。
先週、甲府の方へ赴き女性が好きそうな商品が並ぶお店で買ってきたのだ。
男1人だったから少し勇気が必要だったけど、彼女の喜ぶ顔が見られて満足である。
「普段使える物がいいかなと思って。これからもしばらく寒いのは続くし」
「ほんまありがとう。大事にするわ」
さっそく両手に着用し、手をグーパーと開いて見せる。
可愛いかよ。
でも、サイズの心配もなさそうで良かった。
「指先がスマホも触れるようになってるみたいだから便利だと思う」
「そうなん?…ほんまや!確かにこれは便利やなぁ」
俺の言葉を聞いて、スマホをスワイプし商品のハイテクさを実感している。
テレビショッピングかってくらいの反応だ。
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