ハーメルン
ルーデウスの双子の姉 - 弟に勝てなさすぎるので本気出す -
第一話 「姉と弟」
私、ノア・グレイラットが物心ついたのは、2歳になって少し後ぐらい。
その頃から、双子の弟であるルーデウスは、既に非凡な才能の片鱗を見せていた。
言葉を流暢に喋り、本に書いてある文字を理解し、あまつさえ初級の魔術までも使ってみせた。
当時のまだ無邪気でピュアピュアしていた私は、ルーデウス……ルディがどれだけ異常なことをしているのかはわからず、そうやって次々と新しいことを見せてくれる弟に、目をキラキラさせながらついていっていた。
では、そんな私はどんな子だったかというと、ルディに比べてとてもとても出来が悪く、手の掛かる子供だった。
まず、なにかあるとすぐ泣いた。
おなかが空いたら泣き、排泄をしては泣き、眠くなったら泣き、唐突に目が覚めたと思ったら泣き、そして特になんともなくても泣いていた。
ルディは全然泣かなかったから、私はお父さん、お母さんやメイドのリーリャにそれはもう苦労をかけたことだろう。
次に物覚えが悪かった。
言葉もルディが話し出した数ヶ月後くらいからであり、文字というものを理解したのは、さらにずっと後のことだ。
ルディが毎日2階でやってた魔術の特訓も、「すごいすごーい!」とか「おみずきれーい」とかいう貧弱極まる語彙で合いの手を入れながら、ぽけーっと見つめているだけだった。
そして最後は私の体質。
私は髪も肌も真っ白で、瞳は血のように真っ赤である。
長時間日光に当たると肌が火傷してしまうようで、一度玄関で日向ぼっこしていたらえらい目に遭った。
そのためお母さんたちは家の中でも外でも常にフードのついたローブのような服を着せ、外に迂闊に出ないよう細心の注意を払うようになった。
つまり何が言いたいのかというと、弟は非常に優秀で、対して私はとてもおバカさんで手間がかかる厄介者だったということだ。
私はその時からずっとルディの後追いしかできておらず、一度もあの優秀な弟に何かで上回ったことがないのである。
とはいえ、それによって姉弟仲やら家族仲やらが険悪になるなんてことはなく、私は色んなことの見本を見せてくれるルディを気に入っていたし、ルディもまた純粋に慕ってくる私のことを邪険に思ってはいなかったはずだ。
お母さんたちもルディに比べて迷惑をかけまくっている私にもルディ同様に惜しみなく愛情を注いでくれていた。
そんななか、私とルディはお父さんとお母さん、リーリャの目をこそこそと逃れながら、毎日のように魔術の練習をしていた。
私は見ているだけだったけどね。
ルディは水を飛ばしたり、氷を作ったり、さまざまな魔術を試していて、私はそれを見ているのが何よりも大好きだった。
今思えば、あの頃が一番ルディと気兼ねなく接することのできた日々だっただろう。
それが少しばかり趣きを変え始めたのは、3歳になって少し後。
ルディが中級の水魔術をぶっ放し、秘密の特訓が家族全員に盛大にバレた時からだったと思う。
「きゃー! 見て、あなた! やっぱりうちの子天才だったんだわ!」
大量の水によって澄み切った青い空がよく見えるほどの大穴が開けられた2階の部屋で、お母さんはそう言って飛び跳ねた。
その後、早速家庭教師を雇おうとウキウキで語るお母さんと、男の子なら剣術を教える約束だろうと言って反対したお父さんとであわや喧嘩になりかけたが、リーリャの午前中に魔術、午後に剣術をやればいいという提案によって事なきを得た。
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