ハーメルン
アイビー
ピンクのアスター

夕焼け、黄昏。
そんな時間の話。
生徒はあらかた下校してしまい、運動部とかそこら辺の部活の生徒しか残っていないような、そんな学校のとある教室の中、窓際に座ってただ何をするわけでもなくぼーっと窓の外を眺めている女子生徒がいた。
その子の名前は白凪 幽(しらなぎ ゆう)。白髪紅目…アルビノの女の子だ。アルビノとは先天性色素欠乏症という病気で、メラニンを作る遺伝子が欠損しているために肌や瞳に色素がなく、髪も白くなってしまう病気である。
そしてこの病気の特徴はもう一つあって、それは紫外線への耐性がないということである。
なのでアルビノの子は常に日傘を持ち歩いており、外出するときは必ずと言っていいほど長袖を着ている。
なのだが、幽の日傘は何故かなくなってしまったので帰るに帰れなくなってしまったのだった。
今日は日差しが強いしこのまま帰らずに残っていれば、いつか先生が来るかもしれないと思い、幽はそのまま残っていたのだが…… ガラガラッ!と突然ドアが開かれて、そこに立っていたのは黒髪のポニーテールをした女子生徒だった。
その女子生徒に幽は見覚えがあった。
同じクラスの黒羽 唯(くろは ゆい)で幽とはそれなりに交流がある女の子だ。家に遊びに行ったこともあるし、自宅へ招待したこともある。友達が少ない幽には親友と呼んでも差し支えない。……まぁ、あまり喋らない幽に対して彼女は明るく元気な性格をしているから友達が多いのだろうけど。

「あれ?まだいたんだ」
「うん。日傘なくなっちゃったから……」
「あ〜なるほどね。でももう暗くなってるよ?」
「私にとってはあれでもダメなの」
「ふむ……。じゃあさ、私が送ってあげようか?」
「それは嬉しいけど、日傘はあるの?」
「あるよ!」

そう言って唯はカバンから取り出した日傘を差し出す。

「……なんで二つ持ってるの?」
「えっ?そりゃもちろん君用だよ?」
「……」

幽は無言で日傘を受け取り、立ち上がると唯とすれ違いざまに「ありがと…」といって生徒玄関へと向かう。
先に行ってしまったのでその時の唯の顔はわからなかったが、嬉しそうに
「どういたしまして!」
そういって小走りで走ってくる音が聞こえた。

――

生徒玄関にて靴を履き替えながら話す幽と唯。

「そういえばさっきは何を見てたんだい?」
「別に何も見てなかったよ。ただボーッとしてただけ」
「それなら良いんだけど……」

幽が靴を履いている間に唯は自分の靴を取り出して靴箱の中に入れていた。

「よしっと。じゃあ行こうか」
「うん」

二人は並んで歩き始める。
その間会話はなく、静かな時間が流れる。
しばらくすると唯が沈黙を破った。

「ねぇゆうちゃん」
「ん?何?」
「手繋ごうよ」
「嫌だけど」
「即答!?」

ガーン!!という効果音がつきそうな勢いで落ち込む唯。
しかし幽としてはなぜ手を繋ぎたいのかがわからないのだ。今までにも何度かあったが、その度に断っている。

「うぅ……いいじゃんかー!減るもんじゃないし!!」
「だって繋いだ手に日が当たるでしょ」
「あっ……」

日焼け止めを塗っていない幽の手は赤く腫れてしまうため、日傘があっても繋いでしまうと手が日に当たってしまい、火傷してしまう可能性があった。

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