ハーメルン
……作るわよ、マンダで
……作るわよ、マンダで

「目的に至る因果は直線的とは限らない」これは恐らく、サスケくんに対する言葉であると同時に、大蛇丸様自身の目的達成のためのお言葉だ。大蛇丸様の悲願は、全ての術を知り尽くし、忍という存在の真理を究明すること。
 その実現の一歩として、大蛇丸様は自ら考案された転生忍術により本当のお姿を巨大な白蛇へと変えている。
 ここで、マンダを具材に蛇料理を作り食べるという不可解な発想に立ち帰ってみると、大蛇丸様の視点では、蛇であるマンダを食する行為は、共食いだということがわかる。
 そして、かつて大蛇丸様が僕に授けてくれた言葉────「今までのものが納得できないなら、代わりのものを見つけて次々に足していけばいいだけのこと。少しづつ集めた多くのものから実験と検証を繰り返し、知識と能力を己に蓄積させていく。そしてそこから新しい完璧な自分に向かって、生まれ変わっていく」
 そう、ないものは付け足せばいい。全てを集めれば完璧になる。付加する度に近づいていくんだ。究極の、真実の自己へ。本当の自分へ。
 もしそれが、「規制や制約、予感や想像の枠に収まっていては出来ない」「本当の変化」なら。
 他の生命の経口摂取、最も原始的な同化行為、それが食事。大蛇丸様は、今から同種の生命を食べる……、共食い、カニバリズム、禁忌、いやむしろ……。勢いづいた思考回路にいくつもの単語と概念が浮かんでは消えていく。血霧の里の殺し合い、蟲毒。
 違う。鍵は蛇だ……、龍地洞の白蛇仙人、同化、補完、自然との一体化、死と再生、うちはと千手、チャクラ────六道仙人。
 冴え渡る思考がひとつのターニングポイントを突破したことを、その内容が言葉として纏まるよりも先に直感した。かつて大蛇丸様が僕にくれた言葉を軸に、今までの大蛇丸様の些細な行動すべてが、脳裏で有機的に結びついていく。それは一本の道となり僕の前に開けた。
 全身がぶるぶると震えた。大蛇丸様の、途方もなく深遠なお考え。押し寄せる、尊敬と衝撃、驚愕、興奮、それらの混ざったかつてない感情の波。
 つまり、こういうことだ。
 マンダを取り込むことで大蛇丸様は蛇を超え────
 僕は音をたてて生唾を飲み込んだ。
────龍へと、昇華する。
「……そういうことなんですね。大蛇丸様」
 大蛇丸様は片手を顔の半分に翳し、ククククと機嫌よさように嗤った。僕は眼鏡を押し上げる。
 なら一切手は抜けない。これは大蛇丸様がさらなる高み、六道仙人と同じ次元へ到達するための儀式。
 いわば、白日昇天の儀。
「承知いたしました。では、手配はこちらで」
 言うが早いか、小型の巻物を二つ忍具入れから取り出す。デイダラとの戦闘で僕の服へ付着していた大蛇丸様の血液を、二つあるうち一方の巻物に描かれる口寄せ術式になすり、連絡用の蛇を口寄せした。アジトから調理器具一式を持ってこさせなければならない。蛇をメインに満漢全席を作り饗するため必要と考えられる用意の数々を思い浮かべ、口寄せに用いたのとは別の巻物へ書き連ねる。
「流石ねあなた。やはり優秀……」
「滅相もありません大蛇丸様」
 おい、と臨戦態勢さながらに研ぎ澄まされた雰囲気のサスケくんが鋭く声を発した。せっかちねェ。愉しげな大蛇丸様の応答を耳に挟みながら、僕は巻物を書き上げた。
 大蛇丸様の視線が、僕の書き終えた巻物を飲み込んでアジトの方角へ一直線に這っていく口寄せ蛇を追う。蛇はあっという間に遠のき見えなくなった。

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