ハーメルン
魔剣異聞録~The Legendary Dark Slayer/Zero
Mission 09 <時の傍観者>
魔法学院へと戻ってきた一行は学院長室へやってきた。
スパーダとロングビルを除く三人はオスマンに向かって一礼をし、事の顛末を報告していた。
「ほほう、まさか土くれのフーケが人間ではなかったとはのぅ……これは驚いた」
報告を受けたオスマンは感嘆に呟くものの、あまり驚いている様子がない。隣に控えるコルベールも同様だ。
「じゃが、そのフーケも君達の手によって倒され、〝破壊の箱〟もこうして無事に戻ってきた」
オスマンは未だ破壊の箱――災厄兵器パンドラを担いでいるスパーダを見る。
「これで一件落着じゃな」
満面の笑顔で三人の生徒を褒め称えると、キュルケが「当然ですわ」と誇らしげな態度で答える。
「君達三人に、〝シュヴァリエ〟の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。ミス・タバサはすでにシュヴァリエの爵位を持っているから、精霊勲章の授与を申請しておいたぞ」
ルイズとキュルケの顔がぱっと輝き、キュルケが「本当ですか?」と驚いた声で言った。
「うむ。いいのじゃよ。君達はそのぐらいのことをしたのじゃから。然るべき報酬を受けるのは当然じゃよ」
「……あの、三人とは? スパーダやミス・ロングビルには?」
ルイズがちらりと背後に控える二人を見て、怪訝そうに尋ねる。
オスマンは申し訳なさそうに二人の顔を見て、
「うむ……ミスタ・スパーダは貴族とはいえ異国から来た身じゃし、ミス・ロングビルは正式には貴族ではなくなっているからの……。爵位を授けることができないのじゃ……真に申し訳ないが……」
「別にいりませんよ」
「必要ない」
ロングビルが微かに溜め息を交えて答え、スパーダもパンドラを担いだまま一蹴していた。
「しかし……君達に何も報酬がないのはいかんからの。フーケに懸けられていた賞金を授けるとしよう。他の貴族達からは相当恨まれてたようじゃからのう。確か数万エキューの値がついていたはずじゃな」
複雑な顔を浮かべるロングビルは微かに唸りだす。
「さて、今夜は〝フリッグの舞踏会〟じゃ。この通り、破壊の箱は戻ってきたことじゃし、予定通りに執り行う。今夜の主役はフーケを討伐してみせた君達じゃ。せいぜい、着飾るのじゃぞ」
ポンポン、と手を叩くオスマン。
「そうでしたわ! フーケの騒ぎで忘れておりました!」
キュルケが叫び、三人はオスマンに一礼をすると扉へと向かった。
ルイズはパンドラを担いだまま動かないスパーダをちらりと心配そうに見やる。
「私はまだ用がある」
スパーダが肩越しに向きながらそれだけを言うと、ルイズは頷いて部屋を出て行った。
ルイズ達が退室した後、オスマンは咳払いをすると目の前に立つ二人を見つめる。
「さて、ここからはワシら大人達だけの話じゃな。ミスタ・スパーダ、ミス・ロングビル」
スパーダは机の上にパンドラを置く。重そうな音を立てて大柄なスーツケースはオスマンの目の前に叩きつけられた。
コルベールは興味津々といった様子でパンドラの箱を眺めている。
「こいつをどこで手に入れた? これは私の故郷で作られたものだ」
「ふむ。君の故郷がどのような所かは知らぬが、まさかこれがのう……。
――もう、五年も前になるかの。森を散歩しておったワシはそこに落ちておったこの破壊の箱を見つけたのじゃ。中身が気になって開けようとしたが、開きやせん。……そんな時、ワイバーンに襲われてしまっての。危うく殺されかけてしまったのじゃが、その時に落とした破壊の箱が開き、中から不思議な光が放たれた」
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