3. 女でいることは楽しいことでもある
メイクデビューで大差勝ちしたシンボリルドルフ。
そんな彼女……いや、『シンボリルドルフとトレーナー』の次の課題、それはレース……ではなかった。
「こっちへ視線くださーい!」
「月刊ウマ娘です! 一言お願いします!」
『インタビュー』。それが俺たちの次の課題だ。
メイクデビューが終わった、ということで各社への報道規制が解除され、俺たちへのインタビューを止める物はなくなった。そうなれば当然、記者たちが押し寄せることとなる。
学園から出れば記者の壁。かき分けて帰路へとつくが、ここでも一捻り必要となる。住居を隠すために、タクシーや公共交通機関を使って帰宅する。
「ふぇー……今日はこのルート使ったけど、記者の姿はなさそうかな……」
「……そうだね、私の耳にも何も聞こえない。タクシーだけだともうキツそうかな。かといって公共交通機関だけでも厳しいね……」
「理事長に頼んで車でも用意してもらおうかなぁ。一応私運転できるし」
俺たちは芸能人かなんかか? いや、似たようなものか。事実、現代における競技ウマ娘の人気は下手な芸能人をはるかにしのぐ。
「うげぇ……どうするんだこれ……」
「トレーナーくん?」
「う……どうしましょうか、これ」
自宅で机に突っ伏して、呻くようにして言う俺。ほんとこれどうするんだ。まともに買い物もできないぞ? いつも買い物に行っていた商店街だってそうだ。どこに記者の目があるかと考えながらでは、安心して買い物もできない。
「その件に関しては手を打ってある。今週末の予定を空けておいてもらっただろう?」
「ん、そういえば……なにするか聞いてなかったけど、なにかあるの?」
すいすい、とスマホを弄ったかと思えば、とある画面を見せてくるルドルフ。
そこにはデカデカと『シンボリルドルフ記者会見決定!』という文字。ああー……
そういやルドルフがなにか言ってた気がする。忙しすぎて覚えてなかった。
「というわけさ。インタビューの準備は問題ないかい?」
「もちろん。ボロが出ないように死ぬほど練習したからね……うん……」
「なら重畳。あとでもう一度確認はしておこう」
「はーい……」
光陰矢のごとし。まだ時間があると思っていた記者会見の日は、瞬く間にやってきた。
「う、うう……」
「トレーナーくん、もっとシャキッとしていたまえ。大丈夫、バレやしないよ」
「そういう問題じゃないんですよ……!」
女物の衣類にはある程度慣れた、と思っていた。だがこれは想定すらしていなかったよ!
ひらひらとした衣装、それでいて露出度は高くはない。だがぴったりと体に張り付くようにタイトで、ボディラインが浮き出るようなデザインは予想外だった。
確かに男性的な部分は上手い具合に隠せるデザインにはなっている。だがそれはそうと落ち着かないんだよ!
「なんかめちゃくちゃ可愛い感じのデザインになってますし……! これ、どっちかというとドレスとかそういう方向じゃないですか!?」
「ご明察、落ち着いた感じのドレス、という風にしてしてこしらえてもらったからね。ふふ、その気になればそのままシンボリ家のパーティーにも出席できるよ?」
「うぐぐぐぐ……」
デザイン自体はとてもいいだけに何も言えない。見苦しくならない程度に唸って、抗議の意を示す。
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