ハーメルン
俺「以外」の全員が「2周目」は流石に鬼畜仕様過ぎる。
7話 “Save Date” 『vs仮面の男』
◆◆◆
燃え盛る城の中、2人の男が向かい合う。
「やぁ、少年。良い夜だね」
「良い夜と評するには些か物騒過ぎるがな」
「執行官」ヴァルハイト。
「魔王」エイジ・ククローク。
「それに少年と呼ばれる年齢でもない」
「あはは、違いない。けど、おじさんから見ると少年は少年さ」
言葉を交わす様子は、道で会った友人と世間話をするかのよう。
しかし、仮面の男は片刃の剣を、黒髪の男は双剣を構えている。
「1つ聞いておきたいんだ。少年は一体何がしたかったんだい?魔王としての言葉は殆ど嘘だらけだったよね?」
「それを聞いて何とする?」
「単純な興味かな。ほら、意識しなければ普通に食べちゃうけど、高級な料理って知ってると美味しく感じるみたいな」
「それは貴様の舌が馬鹿なだけだ」
実のところ、2人の間に大層な因縁は無いのだ。
大切な人が殺された復讐などという、ドラマチックな背景があるわけでは無い。
唯々、単純明快な「敵」であるだけ。
物語のように、敵同士の友情が芽生えることは決して無く。
最後の最後まで剣を交えるだけの関係性だ。
「話す価値を見出せない……と言いたい所だが」
「流石、分かってるね。おじさんは勇者に黙って少年を追ってきた。呼ばれて困るのは少年の方だろう?」
「貴様のそういう所は本当に厄介だ」
「誉め言葉として受け取っておくよ」
しかし、だからこそ。
「勇者」と「魔王」のような関係性では無いが故に。
今この瞬間の会話は成立している。
「そも、俺は魔王などと持て囃されるべき存在ではない」
「ビックリするくらい正直な色だ。随分と魔王を肯定的に語るんだね」
「魔王と
雖
(
いえど
)
も王は王。民が仰いで初めて王は王足りえる。ならば、「魔王」とは十分な誉め言葉だろうよ」
「なるほど?少年は王ではない、ということかな?」
「王の器ではない、が正確だ。……そうだな、「悪魔」とでも表現すべきか?」
「悪魔、ね……」
嘘に塗れた魔王が真実を語る場。恐らくは、この「ルート」では唯一の。
「俺は徹頭徹尾、たった1人を救いたかっただけ。それだけの為に大陸を混乱させ、幾多の血を流させた。こんな存在は「悪魔」と評するべきだろう?」
「少年がたった一人の誰かを救いたかった、というのが初耳なわけだけど……それって凄く人間らしい事なんじゃない?」
「そうであれば、「人間」が「悪魔」なのだろうよ」
「あーそれは認める。これは一本取られたかも」
言葉を紡ぎながら、両者はゆっくりと歩を進める。
瓦礫だらけの通路にて、決闘に十分な場所を探しているのだ。
そんなことは、あえて口にせずとも双方が理解していた。
「駄目もとで聞くけど、護りたかった誰かって教えてもらえたりしない?」
「断る」
「……おじさんが少年に勝った場合、その誰かを少年に代わって護ると言っても?」
「くどい。第一、俺は負けぬ。未だエピローグには早すぎる故な」
「エピローグ?」
2人の足が止まり、互いに向かい合う。
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