さよなら青春、また来世
「ハイこちら僕の数少ないパンピーの友達、叶木燈くんです!」
「オイオイ見栄張るなよ悟、パンピーだろうが呪術師だろうが、そもそもお前友達すくな、いだだだだだコブラツイストやめて!!」
「悟、少ない友達がさらに減るからやめな」
「夏油、それ追い打ち」
「だいじょぶだって悟、心配しなくても友達の少なさなら傑もどっこい、いっだい!! 傑もやめろ助けて硝子ちゃん!!」
「学生のノリ続けんのもその辺にしときなよ。叶木、私と付き合う?」
「ゴメンナサイ」
「じゃあ助けない」
「ひどい!!」
そんな、馬鹿みたいな日常。
俺はそんな日々が、どうしようもなく好きだった。
***
あんな奴らとダチやってれば、まあこれくらいは予想の範囲内だ。
と言っても、意外と危なかったことは少なくて、本当に死ぬかと思ったのは傑の代理でみみななちゃんたちを夏祭りに連れていき、ふたりの呪力に惹かれたらしい呪霊に襲われたときくらいか。でもあのときはみみななちゃんたちのおかげでちょっとした重傷で済んだし、そのおかげでふたりも俺に慣れてくれたようだから結果オーライだと思っている。幼女ふたり抱えて全力疾走したのも、もはやいい思い出と言えるだろう。
ああ、恵の式神とかなんとかいう見えない何かに覆い被さられたときも結構危なかったか? 見えない毛玉に潰されて圧死しかけるって、なかなかない体験だった。珍しく恵が青い顔して謝ってきたけど、まあ生きてたし怪我もなかったし毛並みもよかったので、これも特に問題なしでいいだろう。そのあと恵もさらに気合い入れて修行するようになったらしいし、これも結果オーライ。もともと生真面目なんだからそんな無理しなくてもいいのにな。
「大事なオトモダチが苦しんでいても、同じことが言えるかな?」
ゆったりと意識が浮上してくる感覚は心地よかったのに、汚いダミ声に邪魔をされて気分が悪い。どうやら俺の身体は冷たい床に転がされているらしい。うすく目を開けると、電話を片手に喚いている黒服の男が見える。
バイト帰りに夜道を歩いていたことまでは覚えている。一瞬で意識が途切れたような気がするから、何か呪術の類いで襲われたのだろうか。別に身体が動かないわけではないのに拘束をされていないのは、この男には何か俺の動きを止める手段、あるいは俺を殺す手段を持っているからだろう。それがわかるまでは下手なことをしないほうが得策かな。
少し身じろぎをすると、男は俺が起きたことに気づいたらしい。こちらを振り向いて、にやりと気色の悪い顔で笑った。
「ああ、お目覚めかな。すまないね、君には何の恨みもないが、君の友人にはごまんと恨みがあるんだよ。どうか彼らのかわりに苦しんで欲しい」
「あ、どっちの恨みかと思ったら両方か。何かすいませんね、アイツらマジで人の迷惑考えないから」
「おや、ずいぶんと余裕があるようだ。これから君は死ぬより辛い思いをしてもらうというのに、怖くないのかい?」
怖くないかと言われると、とても微妙なところではある。死ぬのは多分怖いが、前に傑に殺されかけたときのが怖かったなぁと、しみじみとそんなことを思った。
「ちなみにその電話、どっちに繋がってるんです?」
「これかい? 五条だよ。話すかい?」
「いいんすか? やっさしー」
「何、どちらにしろこれから君の苦しむ声をたくさん聞いてもらうつもりでいたからね」
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