011 天にまします我らの父よ 『7月25日』 Ⅰ
「まったく、内から外から忙しい身体だね?回復能力があるからと言って、ここまで身体をいじめ抜く事はないだろうに」
カエル顔の医者はカルテをめくりながら……って、ここは!?
「見ての通り病院だね?」
病院…ああ、神裂が運んでくれたのか。あの状況でも敵に情けをかけてくれるとは。呼び捨てにはできまい、神裂さんと呼ばせてもらおう。
「あの、俺の親父は……」
「隣の部屋で寝てるね? まぁ大事には至らないから安心するといい。むしろ、運ばれてきた時は君のほうが重傷だったね?」
そういえばそうだ。直撃は避けたがステイルの魔術を2回食らい、更には能力者の魔術使用によるダメージも受けて、身体中ボロボロだったはず。だが今は……痛むところは特にない。それとも感覚が麻痺しているのか。
「運ばれてから何日くらいなんですか今は?」
「1日だよ」
……1日で治したのだろうか。それともやはり感覚がわからないほどメチャメチャなのだろうか? 正直自覚はある。
「なにか勘違いしているようだけど、実際に治療したのは君の能力だからね? 僕は栄養剤の点滴と包帯くらいしか指示してないね?」
俺の能力、肉体再生か。最終的には無事発動してくれたみたいだが、あの場で働かなかったのはなぜだろうか? そう尋ねると、カエル顔の医者はカルテをめくりながら答えてくれた。
「ふむ、どうやら僕の仮説が間違っていたようだね。以前、僕は君の能力が即時発動しなかったのは、能力使用に慣れてなかったのが原因、と言ったね。もちろんそれもあるんだろうけど……それだけじゃないみたいだね?」
どういうことだろうか?
「おそらく君の能力は並行作業が苦手なようだ。今回のような火傷と体内の……アレはなんと言ったらいいのかね?血管に砕いたガラス粉でも突っ込んだのかい? ……まぁいいか。とにかく、複数個所の怪我の場合、生命維持に必要な部分の修復が最優先のようだね?」
なんと、そんな欠陥があるのか肉体再生には。
「次にこれは仮説だが、君の能力は未知のダメージに対して回復が遅いようだね。火傷は一生分体験したみたいだけど、あの血管の裂傷の仕方は初だったみたいだね?」
魔術使用による肉体へのダメージ。確かに科学の住人だった木原統一には未知であることは間違いない。
「ということは、次に同じ怪我をした時は……」
「もう次に怪我をする予定があるのかね? 医者としては断固反対だね……まぁ参考までに言うと、血管の修復は難しいものじゃない。次からは一瞬で治るだろうね」
魔術を使う予定か……あると言えばあるだろうな。この先、俺がやろうとしてることを考えれば、むしろ必須だろう。
「その顔だとどうやら、怪我をするのは確定のようだね。やれやれ。なら、一つアドバイスをしようか。君の能力は、いまのところ自動で作用してるようだけど、それを意識的に働かせるように出来れば、現状よりマシな状態にはなるね?」
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