020 原典(アカシックレコード) 『8月8日』 Ⅲ
「吸血殺し、ですね」
先ほどとは一転してステイルは落ち着いた顔つきになった。仕事モードというやつだろうか。
「能力者については問題ない。アレは元々私が所有する超能力の一つだ───」
対するアレイスターも、淡々と状況説明をしていく。俺の口を挟む余地は元より無い。だがそれも好都合。この間にのんびりと考え事ができる。
どうやらこの流れでいくと、アレイスターに捕まって実験体になるだとか、そのまま幽閉されると言った状況にはなりそうにない。……まぁ学園都市を牢だと考えれば、学園都市の住人全てが実験体である、と言われれば否定は出来ないのだがそういうことではなく。俺自身を拘束、排除する意思がアレイスターにはなさそうだ、と言うところに問題がある。
別に捕まえてくださいと言うわけではないが不自然なのだ。アレイスターの性格からすると。
何十巻と読んできた原作の知識から考えるに、アレイスターは自らのプランから外れた動きをするものに対しては3通りの対処パターンがある。
1:それを利用してプランを前倒しにする形で修正
2:静観
3:排除
といった感じだ。
1に関してはほぼ上条当麻、一方通行に関する対処である。プランの中枢を担う人材に代わりはおそらくいないのだから、むしろこれしか存在しないとも言える。今回の錬金術師も、ゴーレムで特攻してくるあのライオン丸もこのパターンだろう。
2は手がつけられない状態。というより、どう動くかを考えている状態だろうか。『浜面仕上』などが当てはまる(と思う)。または放っておけば勝手に自滅すると思われる人間もこの状態だろう。というか、半ば浜面もそう判断されていたはずだ。……無一文の無能力者が戦地(天使光臨予定)に病人背負ってフルダイブして、そこに『麦野沈利』が追っかけて行って、更には未元物質で武装した集団が追撃してるのだ。そら死ぬと思うわ。なんで生きてんだアイツ。
3は意外と多い。ヒューズ=カザキリを利用して排除した『前方のヴェント』。直接対決にて処理(生きてはいるが)した『右方のフィアンマ』等がそうだ。窓のないビルに拘束され続けている『フロイライン=クロイトゥーネ』やこれから幽閉される『レディリー=タングルロード』も該当するかもしれない。後はあの魔神軍団とかか。あの決着、俺は見てないんだがどうなったのだろうか。どっちが勝っても嫌な予感しかしない。
さて、俺は自分自身が3に該当すると信じて疑わなかったわけだが、どういうことなのか。
『未来が見える』などという触れ込みでイギリス清教に売られた(無償で貸与された?)ことから、最低でも俺自身が異分子であることは把握しているはずである。
そして未来が見えるなら、それはつまりプランに影響を及ぼす可能性を過分に含んでいる事に他ならない。
更に言うなら、未来の知識はプランを進める上で必ず役に立つ代物ではないのか? これから先大量のイレギュラーを抱える予定のアレイスターだが、現時点では自分の成功を信じて疑わないのか?
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