ハーメルン
転生したので、偽マキマさんはデンジ君を推します
1話 偽マキマさんは転生者

1話 マキマさんは転生者



 一台の黒い車がある日本の片田舎にある廃工場に向かって走っていた。

 「そろそろ到着いたします。」

 高級そうな黒のスーツを身にまとい、ボルサリーノハットを被ったまるで禁酒法時代のマフィアのようなスタイルの男は私に声をかけた。
 だがこんな風貌でも彼の所属は警察で、正義の味方のお巡りさんだ。

 「ん……。わかりました。」

 声をかけられた私は狭い車の中で伸びをして、昼寝から目覚めた。

 「今回出現した悪魔……ゾンビの悪魔ですが、本当にこの人数でいいのですか?万が一に備えてやはりもっと人員を集めたほうが」
 私の前の助手席に座る男が私に提案を行った。ちなみにこの男の服装も、運転席の男と同様にマフィアっぽい感じのファッションである、ご丁寧にマフィアみたいな帽子まで……流行ってんのそれ?

 「いえ、このメンバーで十分です。逆に数が多いと警戒されて逃げられる可能性があります。
 ゾンビの悪魔の真の恐ろしさ、それは悪魔自体の強さではありません。真に警戒すべきは悪魔が作ったゾンビの方です。」

 私は公安警察のくせにマフィアファッションをした男の提案を淡々と否定する。
 
 「ゾンビの悪魔が作り出したゾンビは、他の悪魔のそれとは違い、悪魔が死んでもゾンビ化は解除されずにゾンビはそのまま活動を続けます。
 このことからゾンビの悪魔は、何らかの科学的な方法でゾンビを生み出していることが予想されます。
 このゾンビ化現象のプロセスは不明ですが、これが伝染性の病気の類であった場合、無尽蔵に被害が広がり、壊滅的な被害になる可能性があります。
 生み出されたゾンビが少数で、全てのゾンビが悪魔自身の護衛に駆り出されているこの状況、少数精鋭の奇襲でゾンビの悪魔と作られたゾンビを殲滅する。これがベストです。」

 私は部下に対してなぜこのメンバー、3人だけで来たのかについて、"表向きの"理由を説明した。
 "表向きの"がついてるのには理由がある。私は前世の記憶を持っている。この世界は漫画チェンソーマンの世界だ。前世の私はこの漫画が好きで、2部が楽しみで何度も読み返していた。だが、その2部が出る前に前世の私は事故で死んでしまった。
 だが、その死後あり得ないことが起きた。私の魂は転生して、このチェンソーマンの世界に生まれたのだ。私は原作を読んだ経験から、これから起こることを把握している。だから、私はゾンビの悪魔に大部隊が必要ないことを知っているのだ。
 無論、原作知識があるからといって全てが原作通りに行くとは限らないので、万が一があるかもしれないが、今の私ならそれでも十分対処可能だ。



 「ここが通報のあった廃工場か。」

 私はポツリと呟く。
 いよいよだ。原作通りにこの世界が進んでいるのなら、いよいよここから私と彼の出会いが始まる。

 「シャッター、開けます」

 部下の男がそういうとガラガラと廃工場の入り口のシャッターを上に開けた。
 その先には悲惨な光景が広がっていた。おびただしい量の返り血、無惨にもバラバラに切り刻まれたゾンビの体、そして……その中央に立つ、チェンソーの頭をして、腕からはチェンソーの刃が痛々しく生えた存在。

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