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ある日、神山は帝劇へと大帝国劇場に来ていた。
「支配人っ!」
ロビーの隅で何か考え事をしていた様子の大神を見つけ、駆け寄ろうとしたところ突然何者かによって大神の身体が地面に押し倒された。 見ると、そこにいたのは、大きな剣を手に持ち黒ずくめの装束に身を包んだ金髪の女性だった。「だ~れだっ!?」「......君だよ」「せーいかいっ!
久しぶりだね、お兄ちゃんっ!!」 女性はそう言って満面の笑みを浮かべた後、立ち上がって大神の顔を見上げた。 その女性の顔を知っている人間はそう多くない。 大神一郎という人間を兄として慕う存在であればその正体などすぐに分かるはずなのだが、彼はまるで心当たりがないかのように首を捻った。「俺は............」(そうか、この女性の正体を知っているのは俺だけだ) かつてアイリスだった頃の記憶を思い出した大神は、彼女が誰なのかようやく理解したようだ。「久しぶりだな............
──────天宮さくら君」「え? どうして私の名前を知ってるんですか?」「それはね......」「わ~! ストップストップ! そういうのいいって~!」 かつての想い人の声を聞いた事で正気に戻ったのか、彼女は慌てて手をブンブン振り回して大神の言葉を遮った。「えっと......私はさくらさんであってますか?」「ああ、その通りだが......」「なら良かったぁ~」「良かった......?」「あのぉ~、ちょっといいですかぁ?」「うわっ?!」 突然の第三者の声に驚いた二人の目の前に現れたのは一人の老婆だった。「お二人さんはもしかして恋人同士だったりしますかぁ~?」「恋人だなんて......そんな訳ないじゃないですか......」「そうだよ......俺とさくら君がそんな関係になるなんてありえないよ......」「..................あっそぅ~」(何だ......??) 何故か二人に対して妙に冷ややかな視線を向ける老婆を見て、大神は思わず身構えてしまった。 すると今度は大神の手を引いて歩き出した女性に問いかけた。「あのさ......ここは一体どこなんだい......?」「えっ!?
だからさっき言ったでしょ、お兄ちゃんってば忘れちゃったの?! 私は『夢』を見せてあげるって言ったんですよぉ~?」「......夢を?」「そうですよぉ~。今から幸せな夢の中で過ごすんですねぇ」 どうやらここがどこか分からずに不安になっていると思ったらしい。 しかし、その予想は大きく外れていたようで女性は笑顔のままさらに続ける。「大丈夫ですよ~? 貴方はもう幸せですからね、何にも心配することはないんですよ~」「......」
荒野にて - 第二章 - ンッ!- - ンは白鳥歌野から連絡を受けて、諏訪市内にて待機していた。「それで歌野さん、そっちの方はどうなんですか?」「うん......やっぱり四国の方もバーテックスの侵攻があったみたい......」
電話越しに聞こえてくる歌野の声を聞きながら少年は小さく溜め息を吐く。四国以外の地はすでに敵の手に落ちているという事実を改めて突きつけられてしまったからだ。「そっか......まぁ仕方ありませんよね。だって四国以外は全滅なんですもんね?」「............」
電話先の歌野の様子がおかしいことに気付きながらも敢えて気づかないフリをして会話を続行する少年。ここで下手に気付いてしまって逆に彼女に気を遣わせる訳にはいかないという配慮である。「――だけど大丈夫、私がみんなを助けるからね!」「はい......お願いしますね」
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