間が抜けていると言われても反論できない系一般上位者
「キューピッド。最近になって現れた、小さな機奇械怪よ。君はこの名を知っている?」
「知っているよ」
視線がキツくなる。
雰囲気がザワつく。それはアレキからだけでなく、メーデー、そしてチャルからも。
「会った事があるんだ。昔ね」
「どこで?」
「地上で」
まさか本人です、なんてカミングアウトは要らない。
フリスとキューピッドは別物。キューピッドの隣にいたのもフレシシじゃない。当然そういう体で行く。そのために機奇械怪・『キューピッド』も作る予定でいる。ただし余計な入力になるので絶好の場面以外では出す気はない。たとえ僕がどれほど怪しまれようともね。
「昔からいた、ということ?」
「聞かれてもわからないよ、その辺は。ただ、僕が両親に拾われた15年前から、確かにキューピッドはいた」
「……最近になって現れたわけじゃない、となると……他にも同じような被害に遭っている人がいる……?」
「被害?」
うーん、ちょっと危機管理が甘いかな。
仕方がない、あまりやりたくは無かったけど──チャルの茨を発動させよう。
大丈夫、わざわざ殺しはしない。折角良い入力になってくれそうな奇械士なんだ、僕が芽を摘んでどうするんだって話だし。
ただ、見た目は血だらけになってもらうよ。
「あ……ぐ、ぅ!?」
チャルの右腕に、茨のような紋様が走る。アレキが口を抑えた時にはもう遅い。
そこからバチっと音を立てて現出した金属の茨が──彼女の肌を切り裂く。
「アレキ!」
「そんな、こんなことでも……! ど、どうしたら」
「キューピッド! どこかで見ているんでしょう!? 私達にその気はない──だから、やめて!」
それでも茨は止まらない。
チャルの神経を傷つけない程度の浅さで、茨が腕を、肩を、そして首をと覆っていく。垂れる血液。チャルの苦悶は収まらず、その衣服をも切り裂いて、彼女を傷つけ続ける。
さて、どこまでやろうか。
見えるところに傷があった方が、アレキの罪悪感をくすぐってくれるはず。腕なんかの隠し得るところにつけたって意味はない。消えない傷は、見える場所に。
じゃあやっぱり首かな? でも首は操作が結構難しいから……鎖骨のあたりだろうか。
「い……ぁ、ぐ……!」
チャルが手を伸ばす。
痛みから逃避するためだろうか。それとも助けを求めてか。
その手は──アレキではなく、僕に伸びていて。
「──」
アレキじゃないんだ、と思った。
引き金がアレキだったからだろうか。それとも僕にまだ、そんなにも依存しているからなのだろうか。
……この手を振り払うのは簡単だ。
だけどそれ、どうだろう。
今までチャルの心を僕から離そう大作戦を結構してきたけど……こっちはこっちで面白そうだ。
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