喧嘩別れ
『キンタロー君!今週の日曜会えませんか?』
『バイトなんで、すみません』
『今週は空いてたりしない?』
『すみません、バイトが』
『来週会えたりしないかな?だめなら、再来週は?』
『すみません』
「………もう───!!なんで毎回断られるのよ───!!」
誘いの連絡を入れる度に必ず断られる。
そんなことがもう何週も続いていた。
「あちゃ~、それは、脈ナシかもね」
「なんでよ!」
一花が苦笑するが、二乃はそうであるとは認めたくなかった。
「大体、あんた達だって上杉の奴を誘って断られてたじゃない!何が違うのよ!」
「ぐっ………」
「二乃に言われたくない」
一花が図星をつかれたと怯み、三玖が頬を膨らませて拗ねる。
「………」
「四葉?どうかしたのですか?」
そんなやり取りを見て目を逸らす四葉に、五月が声をかけた。
「えっ?い、いや、なんでもない、なんでもないよー………あはは」
「?」
五月が首をかしげる。
一花と三玖の誘いを断った風太郎が、自分と出掛けていたことを知られる訳にはいかず、何とか誤魔化したかった。
「さあ、今日は家庭教師の土曜日です、勉強の準備をしておきましょう」
「………私、今から予定があるから」
席を立って逃げようとする二乃に、慌てて五月が抑え付ける。
「ま、待ってください~!試験まであと一週間!この前私たちは0点をとったんですから、少しでも勉強をしないと───!」
「う………」
逃げ出そうとした二乃だが、流石に0点のままでは良くないとは思っていた。
「それに、上杉君の弟君に誘いを断られてたじゃないですか、予定なんてないはずです!」
「失礼ねあんた!?」
図星とはいえ、あんまりな言い方だった。
家庭教師の風太郎が中々来ないので、待つ間に各々で自習をすることになった。
「テレビつけるわよ」
二乃がリモコンに手を伸ばそうとしたが、それに先んじて三玖がリモコンを取った。
「………何のつもり?」
「私、見たい番組があるから」
「それはこっちの台詞よ」
三玖が手に取ったリモコンを、二乃も掴んだ。
そこへ、ようやく到着した風太郎と、迎えに行った五月がリビングに入ってくる。
「───時間がないんです、次の試験に向けて、みんなで仲良く協力し合いましょう!」
「三玖、この手をどけなさい」
「二乃こそ諦めて」
「はぁ?あんたが諦めなさいよ!」
「諦めない」
「………みんなで仲良く、ねぇ」
五月が気合を入れて協力しようと言った側から口喧嘩をする二乃と三玖に、風太郎はため息をついた。
「お二人さん、何やってんの?」
「今やってるバラエティにお気にの俳優が出てるから、そのチャンネルが見たいの!」
「ダメ。この時間はドキュメンタリー。今日の特集は見逃せない」
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