ハーメルン
【書籍化!】『君は勇者になれる』才能ない子にノリで言ったら、本当に勇者になり始めたので後方師匠面して全部分かっていた感出した
12話 覚醒ウィルVSダイヤ

 とある朝、僕はいつものように勇者ダンと共に訓練をしていたんだ。だけど、いつもとは少し違う所がある。それは村から少し離れた場所で訓練を行ってると言う点だ。

 森林に囲まれた鬱蒼とした場所。木と木の間から僅かに刺す光明が僕達を照らしていた。僅かにしか光は刺していないと言うのに眼の前の勇者はいつものように極大に輝いていた。

 この人が……あと十年しか輝けないなんて……

 もっと、強くならないといけない!!


「お願いします!」
「どっからでもかかってこい」


 勇者は木剣をこちらに向ける。合図はない、始めるタイミングは僕が決めて良いと言う事だ。全てがこちらにゆだねられている状況で僕は直ぐにも足を踏み出した。この時間を一秒たりとも無駄にしてはならない。

 振り下ろした剣は彼に防がれた。更には僕の刀身を剣先にピンポイントに当てられてる。一瞬のうちに起こった神業に驚いている暇もない。一度引いて、そこから振り下ろす……と見せかけて、敢えて空振り、そこから切り上げる。

 それで一撃が決まる訳が無い。彼は上からフェイントとして放った空振りを防ごうともしなかった。全て分かっていたのだろう。


 未来すら見通すことが出来るとすら言われた勇者ダンの洞察力、それを甘く見ていたつもりはない。しかし、本当に心の奥底を更には自身すら知りえないようなことまで知られているような気がして、身の毛がよだった。


「少し、攻めるぞ」


 ――少し


 少しって、なんだっけ……? 真上から岩石でも降ってきたかのよな衝撃。真横から巨人の手でビンタされたくらいの爆発力。どこが少しだよ!?

 僕からしたら大嵐だ。

 重くてしなやか、同時に速い。最早、自身の眼では追えないほどに速過ぎた。だけど、なんとか僕は喰らい付いていたのだ。一撃すら食らわずになんとか耐え凌ぐ。

 しかし、手が震えていた。手も剣を通じて喰らった振動の余波で鉛のように重くなってしまった。

「少しはできるようになったな」

 数秒の打ち合いの果てに、体力が底をつく。そして、上から隕石が落ちてきた。正にこのまま体がすりつぶされると幻覚を見てしまう程にその一撃は強さが内包されていた。

 勇者の剣は僕の頭に激突することなく、直前で止められていた。あまりの迫力に僕は腰をついていた。

「あ、あ……」

 言葉にならない。彼に殺気はないとしても、容易に自身を潰すことが出来る人は恐怖を簡単に与えることが出来ると知った。

「少し、休め」


 言われるがまま休憩をした。しかし、すぐに腰を上げて彼に挑んだ。結果はいつもと同じでボロボロに負けるだけで汗だくになった。

「近くに滝がある。水浴びでもしていくといい」
「あ、はい!」


 確かにあれだけ汗をかいていたら村の人にも、メンメンにも怪しまれてしまう。服を脱いで僕は滝で水を浴びた。ついでに勇者様も浴びるようだ。

「あの」
「なんだ」
「水浴びでも仮面は取らないんですか……?」
「文句あるか」
「あ、ないです」

 全然水浴びになってないような気がする。だって、鉄仮面で滝の水が弾かれてるし、勇者ダンって偶によく分からない気がする。まぁ、僕程度に分かる訳がないんだけど……。

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