ハーメルン
愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる
???は『ラブヒーロー』と命名される





 新世界のどこかの海域で。



 ―――ドンッ!!



「――おっ」

 未来の海賊王『ゴール・D・ロジャー』が船長のオーロジャクソン号が大きく揺れた。
 時折、彼らの船は大きな音と共に揺れる。
 そしてこの揺れの原因は、いつも同じだ。

「おい! 愛の坊主が来たぞ!」
「ハッハッハ! バギー、シャンクス、雪辱戦だ!!」

 甲板に船員全員が出ると、そこに立っているのは、頭に布を巻いて顔を隠した子供。
 彼と初めて会った時からもう2年は経った。
 それから度々、多いときは週に1、2回のペースでオーロジャクソン号を襲いに来ている。

「ヒエエエ! か、勝てる訳ないッすよォ!!」
「この間来たのは2週間ちょい前か……! ちょうどいい、サーベルを新調したんだ!!」

 ビビるバギーと、好戦的な笑みでサーベルを抜くシャンクス。

「お前ら愛を乱す海賊を潰しに……いや、口上はもういい」

 一番年齢の近い二人と子供がぶつかり合う。
 だが結果はいつも同じだ。

「ひでぶッ!!」

 まずバギーが一撃で叩きのめされ。

「ぐッ――」

 シャンクスが3回ほど攻撃を受け止めるも、ガードを弾き飛ばされ、船の端まで吹っ飛ばされる。

 これがお決まりのパターン。
 そして、他の船員に襲い掛かろうとしたところで、副船長のレイリーか船長のロジャーが飛び出してくるのもお決まりだ。

 今日は――。



「はっはー!! よく来たな坊主!」

 ドタドタと走ってきた立派な口ひげをこさえる壮年の男が、子供の顔面にグーパンチを決めた。
 メリリッ……!と嫌な音が響き、子供が吹っ飛ばされる。

 が、自身の手より遠くに吹っ飛ぶ前に、足を掴んで甲板に叩きつけた。
 即座に馬乗りになり、子供の顔面に向けて拳を振り下ろし続ける。

「おらどうした! もうちょっと抵抗して見せんか!」

 端から見れば普通に虐待だ。
 だが彼らは海賊、一般常識を気にする訳がない。
 それに子供は一応襲撃者だ。容赦をする必要はない。

「――大気崩壊(エア・ブレイク)!!」

 子供は、落ちてくる拳を首を捻ることで避け、ロジャーの胸元に手を押し当てた。
 瞬間、彼の身体が物凄い勢いで空に跳ね飛ばされる。

「おいおい、前より威力が上がってるじゃねェか」
「―――だァらッ!」

 空気の壁で飛び上がってロジャーの懐に入り、思いきり殴り掛かる。
 ……が、簡単に避けられてしまった。

「よッ!!」

 ロジャーが体を捻り、空中で後ろ回し蹴りを放つ。
 彼のかかとは見事に子供の頬へ命中し、空気の壁で防ぐ暇もなく吹っ飛ばされた。
 意識を失ったのか、白目を剥いて吹っ飛んでいった先は―――


 ―――ぼちゃッ


 海だった。


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