ハーメルン
大学生、上杉風太郎。インフルエンサーでホストやってます
第1話


オッサン。クイーン。クイーンの弟子の物静かなホステス。ピンク髪。そして俺。

夏真っ盛りの夜。VIPルームで静かに行われる今日のこの謎の会合。

途中参加の俺では事情は知らないし、教えてもくれないだろうし、むしろ詳しく知ってしまったら消される類の話の場合もあるので、予想でしかないが——多分最初はオッサンもクイーンとピンク髪の3人だけでゆっくり飲むつもりだったのだろう。

クイーンにとっては半分は仕事だが、半分はプライベートのような知人の接待。

開始早々オッサンとクイーンの昔話に花が咲いてしまってピンク髪が手持ち無沙汰になったのだ。見かねたクイーンが仕事モードになり、ピンク髪の相手役を召喚する事を提案。

「えーと。紳士的な人がいいなぁー」なんて当たり障りの無い回答をしたピンク髪の要望に応えて、俺をマッチングした。更にもう一人ホステスを呼んで、クイーンとオッサン二人だけの場になりかけてた所を仕切り直しをかけたって所だ。どうだ、当たってるか?いや聞けねーけど。

酒を作り終え、談笑しているクイーンの後ろから静かにサーブし終え、俺は再びピンク髪の隣に座った。

「ほらグレープフルーツジュース。酒回ってるんだろ?これ飲んで落ち着けよ」

バカ高いテンションをやめてローギアで話しかけてみる事にする。
押してダメなら引いてみろ。
恋愛解説本で得た知識だが意外にもこういう時に役に立つ。酒を作ってる間に観察しプロファイリングした結果、このピンク女は何故か今は通常時ではなく、緊張しまくっている事が判明した。

飲み切ったグラスに残った氷をそのまま口に放り込み飴玉の様に転がしながら、相変わらずブツブツ言っているのはつまり、平静じゃない。たった一杯で思いの外酔っているのだろう。体調も良くないのかもしれない。なのでアルコールを抜き、一旦落ち着ける。

今もクイーンには横目で俺の仕事を監視されている。こんな人の顔を見るや平静を失う謎のヤベー客と当たった時にどんな対応が取れるかを、だ。

と言うか恐らく若干クイーン自身もピンク髪の反応に戸惑ってるし、オッサンは酔って周りが見えていない。クイーンの弟子は我関せずだ。俺が俺の判断で動くしかない。攻め方を変えて仕切り直しだ。

「じゃあ改めて、俺はフータだ。
ヒトハナちゃんだっけ?服装とか見てる限り俺と趣味も合いそうだな。せっかくこうやって歳も近いだろう人間が出会えたんだ。お互い仕事とか関係なく、ゆっくり喋ろうぜ」

これは嘘だ。こっちはバリバリ仕事のつもりだし、こんな全身ハイブランドの服で身を固めた女と趣味が合うはずも無い。であるが、嘘も方便だぞ!と恋愛本に書いてあったから大丈夫だ。


「ふ、フータ君だっけ?」


来た。まったり飲みの選択が今回は当たりだ、ようやく一言引き出したぜ。

落ち着け。即座に条件反射でパリピモードで反応しそうになった所をグッと抑えて平静のテンションを保つ。逆にこう言う場で普段のテンションを装う方が俺にとっては難しい。


「あぁ間抜けな名前だろ?
クイーンが付けたんだ。黒薔薇とか源氏名付けられた同期とかもいるから、それよかマシだけどな」

「ふ、ふーん。頭も良いんだって?」

「むしろ勉強ができる事以外に自慢がない」


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