ハーメルン
大学生、上杉風太郎。インフルエンサーでホストやってます
第3話




東京都港区品川駅


——ザッ


「来たわね」

「うん。来たね——東京」



そうだ。私達は遂にやって来たのだ。
日本の首都。東京に。

「えーと。カフェめぐりもショッピングも良いけど、なにより先にホテルにチェックインかしら。とりあえず荷物を置きたいわ、重いもの」

「賛成…疲れたもん」

新幹線に乗って約3時間。
夕暮れの色合いに染まった品川の町並みを横目に見ながら二乃と私はキャリーケースをコロコロと転がして、タクシー乗り場を探しだした。

とにかく東京は駅が大きくて迷いやすい。
新幹線のホームから駅の出口まで歩いてくるだけで一苦労だったのだ。

今日のホテルは新宿駅に取ってある。
昼食は新幹線の中で私は牛タン弁当を、二乃はしゅうまい弁当を食べていた。
しゅうまいの香ばしい匂いが車内に広がって、隣の席の私は少し気まずい思いをしていたのだけど、二乃は何も気にせず食べていた。流石二乃。ハートが強すぎる、と私は思っていた。

「ふふ。やっぱり都会はワクワクするわね。大会は東京で行われるし、目ぼしいライバル達はここらの学生が大半よ。色んな場所を食べ歩きしてセンスを磨くわよ。三玖」

「今から張り切りすぎると、バテちゃうよ。ゆっくりやろうよ」

二乃は料理の大会に向けて燃えていた。
昨年の大会のリベンジするにしても、燃えすぎだ。もっとレベルの高い専門学校に転入しようと提案してからの行動が早すぎて、私は着いていくのに必死だった。

私達の専攻は洋食。
卒業後の先輩には一流ホテルで既に厨房を任せてもらっていたり、修行をしている人達の多い有名専門学校への転入をする。その家探しに今回はやって来たのだ。

「でも、結局事前には決まらなかったね…住む場所…新宿の通う学校の近くで適当に決めればいいじゃん」

「東京は魅力的な街が多すぎるのよ!新宿もいいけど渋谷とか原宿とか下北沢とかの若者文化が花開いている場所に住むっていう選択肢は捨てきれないわ!三玖だって最初は秋葉原が良いなんて言ってたじゃない。それなのに学校から遠いって分かったら急にどうでもいいみたいな雰囲気になっちゃって!」

「通学に1時間は流石に遠いから私は諦めたよ…ほら。そろそろ私達の番だよ」

そんな事を話しながら私達はようやく見つけたタクシー乗り場から車に乗り込んだ。

「ほら見て見て。三玖。表参道よ。表参道。出てるお店も名だたるハイブランドばっかりで涎が出ちゃうわね」

「二乃。恥ずかしいから窓に張り付くのやめて…」

タクシーの運転手の人にも少し笑われてるし。完全にお登りさんだよこれじゃ。実際そうだけど。

「五月はお茶の水。四葉は二子玉川だっけ。みんなバラバラね。東京は広いわ」

「うん。あと意外だけど今フータローはし…」

「あいつの話はやめなさい。三玖。一年も顔を見せに来なかった薄情な男よ。どーせ、五月とイチャイチャできる距離の家にでも住んでるんでしょ。いやらしい。許せないわ」

「きゅ、急に手のひら返すんだね二乃…」

これ可愛さあまって憎さ100倍ってやつだ。
嫉妬でおかしくなってるよこれ…。

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