ハーメルン
大学生、上杉風太郎。インフルエンサーでホストやってます
第3話



「あ、あれー?ず、随分繁華街の方に行くんだね、五月ちゃん?この辺なかなか治安悪いけど大丈夫かなー?」

「そう。いきなりヤクザが襲ってきてバトルが始まるんだよ。それで電子レンジに顔を突っ込んでチンするの」

「大丈夫ですよ!東宝シネマズが出来た辺りからこの辺の治安もすっかり改善して、お店に入りやすくなったってレビューに書いてあります!」


五月は既にお肉モードになっていて、目を輝かせながらズンズンと足を進めていく。それに続く私達だが、周囲をキョロキョロ見回して一花は妙に落ち着かない感じ。有名人は大変だ。でも流石にこんな顔の似た女が集まっていたら一花もバレたりしないだろうから安心だろう。


「見て見て。喧嘩だわ。喧嘩。さすが悪名名高き歌舞伎町。ホストっぽい人達が言い争ってるわ」


「あ、本当だ。凄い…生チンピラだ…!きっと周囲の自転車とかネオン看板を振り回して攻撃し合うから、遠くから見物しようね」

血の気の多い二乃と一緒に私も少し盛り上がってしまう。距離がかなり遠いけど、派手な髪色をした男の人達が胸ぐらを掴み合っている。


『はなせ!はなしてくれフータ!俺はこいつを殴らなきゃならねぇ!うちの店にいっつもチョッカイ掛けて来やがって!客にまで手出しやがったからにはコイツは今日こそ拉致って顔面にウチの宣伝営業トラックのタイヤ痕をヤキイレしてやるYO!』

『落ち着け!クイーンがやってくるまで耐えるんだ黒薔薇!お前らも見てないでコイツ抑えろ!』


「おぉーすごい迫力だわ。イケメン同士の争いってどうしてこんなにも心踊るのかしら。投げ銭したいくらいだわ。あぁコンタクト付けてこれば良かった」

二乃は目を輝かせながら遠くの光景を見つめる。そうだった…ニ乃はあぁいう系統の人達がタイプだった…。入れ込んだら一直線の性格も加味して、あの手のクラブに入らない様にブロックしないといけないな…。


「ん?どうかした一花?なんか汗凄いよ」

「ん?ん?え?いやー!そんな事無いよ!ちょっーっと暑いなーって!えへ。えへへへ」


四葉が一花を心配して声を掛けると、一花は遠くの光景から視線を外して手で顔を扇ぐような動作をオーバーにしていた。歌舞伎町に入ってからは人口密度が上がって活気はあるけど、そんなに温度まで上がるだろうか。


「さぁ!ここです!突入しますよ、いいですね!ここの推しは骨付きカルビです!A5等級のお肉を一番初めにお腹に入れますよ!良いですね!」


興奮のピークに達した五月の声に合わせて、見物をやめて私達は掛け声を上げてお店に入った。










それにしても、喧嘩してる人を止めてた、さっきの金髪の人。

どこか…誰かに…

あえて言えば…そうだ。

肝試しの時に見たフータ———



「あぁー!三玖!どうしたのかなー!?入口前で立つのは良くないから早くお店に入ろーね!」




と、一花に背中を押されて店の中に入りこんだ事で思考は途切れた。










「まさかね」

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