第10話
7月1日は、新たなクラスポイントが発表される日。
真嶋先生が、ホワイトボードに結果を書き始めた。
Aクラス - 954 ポイント
Bクラス - 915 ポイント
Cクラス - 600 ポイント
Dクラス - 87 ポイント
誰かのヤバいという声が、教室内に小さく響く。
ポイントは上がっているはずなのに、まるでお通夜みたいな雰囲気だ。
39ポイント差。ここまで来ると、特別試験どころか授業態度でもひっくり返るだろう。
中でも一番動揺しているのが、葛城だった。
表情は変えないが、身体は震えており、焦りを隠せない。
これはもう、仕方がない。このクラスで一番優秀な人間が、わざわざ負けさせようと動いてるんだ。葛城が悪いとかじゃなくて、どうしようもないように思える。
でも、そうと知らない葛城は自分の責任だと考えるのだろう。
その点については、正直可哀そうに思えてしまう。
夏休み明けには逆転かな。これは、俺だからそう思うというわけではなく、クラスの多くの生徒が感じていることだろう。全体的に諦めムードが充満している。
そして、ポイントが振り込まれていない。
間違いなく例の事件の影響と思われる。
俺も有栖ちゃんもポイントには余裕があるので、特に問題はないが……
「うちのクラスの生徒ではないが、他クラスでトラブルが発生している。それによってポイントの振り込みが遅れているが、トラブルの決着がつき次第、支給されるだろう」
真嶋先生の話で、クラスがざわめく。
どうせCクラスだろ!と戸塚が騒いだ。誰も聞いてないけど。
俺と有栖ちゃんは被害を受けていないが、最近AクラスはCクラスの生徒に因縁をつけられたり、嫌がらせを受けているらしい。「史上最弱のAクラス」なんて言われているとか。
そう、龍園はすでにAクラスをターゲットとしているのだ。
おそらく、簡単に潰せそうだと思ったのだろう。
Bクラスとは勢いの差が大きすぎる。落ち目であることは明白だ。
揺さぶる相手として選ぶのは、当然といえば当然の判断である。
次の日以降、Cクラスの生徒とDクラスの須藤が起こした暴力事件について知っていることはないかと、綾小路や桔梗ちゃんが聞きに来るようになった。
しかし、いくら有栖ちゃんでも見ていないものを見たことにはできない。
また、俺が原作知識で話すと余計ややこしくなるのは目に見えているため、この件に関してはあくまでも無関係を貫かせてもらった。
ただ全く力になれないのも申し訳ないので、帆波さんを頼ってはどうかと勧めた。
こうすれば、原作の展開に回帰していくのではなかろうか。
実際、生徒会を巻き込んで審議されると聞いたので、解決は近いと思われる。
それに、今回は綾小路の見せ場だ。
俺みたいな雑魚が主人公の出番を取るなど、烏滸がましいというものだろう?
というわけで。
「有栖ちゃん、美味しい?」
「食べますか?とても美味しいのですが、私には少し多いかもしれません」
「じゃあ、もらおうかな……うまい」
今日はレストランでランチと洒落込んでいた。
この後は買い物に行って、それからカフェでコーヒーと甘いものでも楽しもうか。
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