未来に続く今なのか、今よりも将来なのか
ゲートが閉まる。
この段階に至っても墨田は迷っていた。
大外、そして追い込み、過去の成績を見るにあまり好走はしていない。
それに、一度だけ見せてくれたレクサスの走り。
馬群に突っ込み抜き去るあの走りが迷わせる。
直線で坂道を2度登るコース、スタートとゴール直後にそれはある。
最初と最後、駆け上がる坂道はタフな馬でないと進めない。
【今日のメインレースは今年で24回を迎えました。まさに出世レースG1への登竜門、ラジオNIKKEI2歳ステークスです。13頭が顔を合わせますが、上野さん生憎のコンディションですね。雨と重馬場という】
【そうですね、まぁこれからはね。こういう馬場でも競馬しなきゃいけないわけですから色んな意味で経験していかなきゃいけませんね】
【まぁ、試さ、試させ、試させられる競馬ってことですね。さぁ、1番人気にされた3戦2勝メジロレクサスが最後にゲートインです……】
今日は重馬場と雨、あまりレクサスの機嫌は良くないだろう。
出来るだけ鞭を使わずに最後に走り抜く、しかしこのプランで良いのか。
しかし、レクサスが調子を崩さないように騎乗するのが最優先、やはりこのまま行くか。
このコースではコーナーまでの距離が長く、大外や最内のような枠による不利は少ない。
少ないからこそ、コース争いが発生しにくく、序盤から終盤まであまり変わらない。
つまり、馬群が固定されてしまうから最初から良い位置を確保したい。
序盤の先行勢にアドバンテージを与えないよう、まずはロケットスタートで加速しよう。
【スタートしました、ほぼ揃いました。やや前に出たメジロレクサス、逃げると思われたショウナンラクロスは後方になってしまいました】
ゲートが開く、鞭を入れる。
スタートダッシュは得意な馬だ。
前と同じように出鞭でスタートする。
メジロレクサスは最初の騎手の癖が残ってるのか、逃げや先行のように出鞭を入れられるのを待っている節がある。
だが、入れれば良いスタートを必ずする。
だから、最初だけ一度鞭を入れる。
一番の外枠から、内側へと馬群を抜けて経済コースを確保する。
少し無理をしたか、しかしレクサスは消耗していない。
此方の動きに過去の大逃げを思い出したのか先行組が鞭を入れた。
こんな序盤で、坂道を抜けた直後に、体力を使って良い位置を確保しにきたのだ。
此方はそんな彼らを追わず、一定速度で走り続ける。
無理に抜かして体力を減らす、俺達の勝負はラスト3ハロンからだ。
【1コーナーのカーブに入りました。人気のダノンイサオは中団よりも後ろ、それをマークするようにフローテーション続いて、現在メジロレクサスは最後方です。人気馬は後ろ、1、2コーナー中間地点を通過しています。ハナを奪ったのは12番のイイデシンゲン!身体半分くらいのリードになった、6番のマイネルファルケが2番手です】
俺の横を他の奴らが抜いていく。
最初にいい位置を得たから、キツイだろうなぁ。
レクサスは落ち着いてるが、少し焦りを感じる。
このまま、この位置に居てもいいが垂れてくる逃げ馬のせいで内側は下がってくる。
巻き込まれる、避けるか失速しないといけなくなる。
こんなことで体力や気力を消費したくない。
こっちだ、こっちだレクサス。
そうだ、ここで無駄な体力は使うな。
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