ハーメルン
【完結】死灰の少女~ashes to ashes, dust to dust~
11.リビングデッド
「…………」
アッシュは一人、電気をつけずベッドの上に寝転がっていた。
場所はリディアンの寮にある彼女の部屋ではなく、最初にS.O.N.G.に来たときに割り当てられた彼女の部屋である。
今日は帰る気にはなれないと弦十郎達に言い、今こうして暗い部屋の中で天井に顔を向けているのだ。
「……お母様」
彼女が考えるのは、先程あった弦十郎達との会話である。
◇◆◇◆◇
「アッシュ君……それは間違いないのか」
弦十郎は、今回の蘇った死人達についてアッシュが母のことを呟いたのを聞き逃さなかった。
「うん……間違いないと思う」
アッシュは弦十郎に頷く。
彼女は確信していた。今回の件が、ダストの仕業であることを。
「し、しかし、今回の事件を起こした方々の身体チェックではアッシュさんのように『偽りの聖十字架片』も『偽りの聖釘』も出てきませんでした。むしろ、肉体的には普通の人間と変わりなく……もしそうだとするならば、ダストさんはより高度な死者蘇生技術を手に入れたことになります……!」
困惑しながら言うのはエルフナインだ。
彼女は未だ事態を信じられていないようだった。
「手に入れたんでしょ。お母様は。その、死者蘇生の技術とやらを」
しかし、アッシュはピシャリと言う。
その言葉に、場の空気がより凍りつく。
「死人を蘇らせる方法……もしそんなものがあるなら、それこと偉いことだぜ。世の中ひっくり返っちまう」
「そうでもないよ。まだ、本当に私を生み出した術式よりも高位かは、決まってない」
クリスの呟きにアッシュが返す。
そしてアッシュは弦十郎の方を向いて言う。
「ねぇ、弦十郎。お願いがあるんだけど」
「……なんだね、アッシュ君」
「私をその蘇った人々のところに連れて行って欲しい。何か分かることがあるかも」
「しかし……いや、分かった。許可しよう」
弦十郎は僅かに逡巡した様子を見せながらも、アッシュにそれを許可した。
「ありがとう」
アッシュはその事に礼を言うと、いつの間にか司令室にいた慎次に案内され蘇った死者の錬金術師が閉じ込められている独房の方へと向かう。
響達も、彼女についていく。
「こちらです」
慎次が独房の扉を開ける。アッシュはその中に入っていく。
「みんなはここで待ってて。私一人で確かめたい」
「うん……気をつけてね」
響の心配する言葉に、アッシュは軽く笑みを見せ、独房の扉を閉める。
白い壁に覆われた独房には、椅子に拘束された錬金術師とアッシュの二人きりになっていた。
「…………」
突然現れたアッシュに、錬金術師はただ視線を送るだけだった。
いや、本当に彼女を見ているのかさえ分からなかった。その瞳は、とても空虚だった。
「…………」
アッシュもまた、無言で死人に近づく。そして――
「――っ!」
次の瞬間、アッシュは手の甲から釘を伸ばし、それを勢いよく錬金術師の腕に突き刺したのだ。
「アッシュちゃん!?」
「お前、何やってんだ!?」
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