ハーメルン
【完結】死灰の少女~ashes to ashes, dust to dust~
14.陰謀の影

 学校が終わったあと、アッシュはS.O.N.G.本部の司令室を訪れていた。

「アッシュ君、大丈夫なのか?」

 司令室に入るとまず弦十郎が声をかけてくる。
 他にも、あおい達オペレーターや先に来ていた響達装者が心配そうな顔でアッシュを見る。

「大丈夫、私は問題ない。……そんな顔しないでみんな、今はお母様の陰謀に対抗するほうが先、でしょ?」
「しかし……」

 アッシュを心配し口を開く翼。だが、そんな翼を制止した手があった。
 クリスの手だった。

「そうだな、今は少しでも考える頭が必要だ。頼むぞ、アッシュ」
「任せて」

 アッシュはぴしゃりと答えると、司令室に大きく映し出されているモニターの前に立つ。
 一方で翼は、クリスに小さな声で話しかける。

「……いいのか雪音、今の彼女を放っておいて」
「……気持ちは分かるぜ先輩。でもよ、こういうときは頭なり体なり動かしてた方が気が紛れるってもんだ。例えそれが、辛い現実にぶち当たることになってもな。……ゲリラに捕まってた頃、それを嫌というほど味わったよ」
「雪音……」

 翼は悲しそうな顔でクリスを見る。
 クリスは、そんな翼に苦笑する。

「んな顔するなって。ちょっと昔を思い出しただけさ。……アタシ達で、あいつを支えてやろうぜ、先輩」
「……ああ、そうだな」

 二人はそうして頷き合い、モニターを見る。
 モニターに映し出されていたのは、ダスト、そしてフィーネの姿、更にはデータとして今までのアルカノイズ出現事件の記録だった。

「彼女も話した通り、どうやらダストには死んだ人間を傀儡として蘇らせる手段があるようです。しかもその方法は、彼女の言葉を信じるなら『全ての記憶(アカシックレコード)』への接続によって行われていると。それが本当なら、彼女の技術はかなりの水域に達していると言わざるを得ません」

 説明するのはエルフナインだ。
 写し出されたデータを見ながら、彼女はとても険しい表情をしている。

「しかも、いずれは個人の記憶や感情をも再現できると言っていたな……一体、奴の目的は何なんだ? 死んだ人間を蘇らせ、操り、そして人を殺す。そこに一貫性があるようには思えんが」
「おそらくお母様は……生命を作り出そうとしているんじゃないかと思う」

 翼の疑問に、アッシュが答える。

「生命を?」
「うん。多分、私を創ったのもその一環なんだと思う。ホムンクルスとも違う、純粋な生命。お母様はそれを創造しようと思っているんじゃないかな。そしてそのための材料集めに……」
「人を殺してる、ってわけか……チッ、胸糞悪ぃ。命を創りたいってんならいい男でも見つけて子作りでもしろってんだ」

 クリスは左の手のひらに右の拳をぶつけながら言う。
 一方で、マリアが難しい顔をしながら口を開く。

「でも、それって何かおかしくないかしら? 彼女の口ぶりには何か……壮大な計画があるように思えたわ。それが、命を作るために人を殺すなんて非効率な行為の事とは考えづらい。彼女には何か他に、目的があるんじゃないかしら」
「うん、マリアの言う通り。それは私も感じてた。お母様は、あえて自らの死者蘇生法を語った。つまりそれは、お母様の本来の目的とは別だから話した、そんな感じがするの。お母様は何かもっとこう……別の、大きな目的を持っている。そんな気がする」

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