ハーメルン
【完結】死灰の少女~ashes to ashes, dust to dust~
16.決意
「全人類の抹殺か……かなりの大事になったな」
S.O.N.G.本部で、弦十郎は並び立つ装者の前で言った。
装者達はダストが巨大要塞と共に現れ、それと同時に蘇らせられた者達が引いていったために一度本部に戻っていた。
「ええ……しかもあの要塞、マムが言うには『塵の楼閣』と言うらしいけれど、あれで一体何をするつもりなのかしら……」
マリアが重苦しい表情で言う。
重々しい顔をしているのはマリアだけではなかった。他の装者達も、みな同じような顔をしている。
「それにしてもダストのやつ……死んだ人間を復活させて自分の手駒にするなんて、許せねぇ!」
クリスが言う。
彼女達の表情は、みなそこに起因していた。
かつて宿敵でありながらも心を通わせた者達が再び敵として蘇らせられた。
その現実が彼女達に重くのしかかっていたのだ。
「まさかキャロル達まで復活させられていたなんて……キャロルは自分達はデータをコピーした魂のない人形だと言ったんですよね?」
質問したのはエルフナインだ。その言葉に翼が頷く。
「ああ、確かにそう言っていた。だが、そんなことが本当に可能なのか?」
「確証はありませんが……『
全ての記憶
(
アカシックレコード
)
』に一部ではありますがアクセスできているとするならば、可能かもしれません。おそらく、全人類の抹殺の方法もそこと関連があると思われます」
「謎は深まるばかりね……とはいえ、今は彼女の野望を阻止することを考えないと。……ところで、アッシュは? 彼女の目的を阻止するのにはダストと長い時間一緒にいた彼女の力がいると思うのだけれど」
マリアが聞くと、響がゆっくりと首を横に振った。
「少しの間、一人になりたいそうです。その、私からもお願いします……多分、一番ショックを受けてるのはアッシュちゃんだと思うから……」
◇◆◇◆◇
「…………」
アッシュは一人、自室でシャワーを浴びていた。
もうずいぶんと、体に水を浴びせている。
「……お母様」
アッシュは母の名前をつぶやく。
彼女の心は今、ぐちゃぐちゃになっていた。
「お母様は、何がしたいの……?」
アッシュはダストの事が分からなくなっていた。
自分を創り出し、慈しんで育ててくれたのは間違いなくダストだ。
昔のアッシュなら、何も疑わずダストの計画に手を貸しただろう。
だが今、アッシュには他にも大切なもの、守りたいものが生まれてしまった。
響を始めとしたS.O.N.G.の仲間達、学校の友人達、そんな彼女らと共に過ごす日常。
僅かな間ではあったが、それらは彼女にとってかけがえのないものになっていた。
ゆえに、だからこそ。
アッシュは分からなかった。
なぜダストは自分を響達とめぐり合わせ、そんな日々を過ごすように仕向けたのか。
ダストの今までの行動は今回の計画のためにあったと言えよう。
だが、創り出した自分を捨て響達と交流をさせ、その上で戻ってこいと言う。
その行動だけは不可解だった。
彼女の人類抹殺という目的からは外れていた。
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