ハーメルン
【完結】死灰の少女~ashes to ashes, dust to dust~
18.対峙する過去
「でやあああああああああああああああああああああああああっ!」
響の目にも留まらぬ速さの拳がフィーネを襲う。
フィーネはそれを体から繰り出す黒い触手で防いでいっていた。
「どうした立花響、それでは私の心臓に届かんぞッ!」
「はいっ! 了子さんッ! 私のこの手、必ず届かせて見せますッ!」
響はさらに拳の速度を早める。その速さは、腕が何本も見えるほどの速さであった。
その速さに、だんだんとフィーネは対応できなくなっていく。
「見事ね! 私が死んでいる間に、更に腕を上げたようねッ!」
「ありがとうございます!」
フィーネは笑いながら言う。
無理に復活させられた自分を打倒してくれるのが響であることが、彼女には嬉しかったのだ。
「ぐっ!?」
ついに響の拳の一発が、フィーネの腹部を捉える。
フィーネは苦痛の表情を浮かべ、同時に触手の動きが鈍る。
響は、それを逃さなかった。
「はああああああああ……ッ!」
響は右腕に力を貯める。すると、アームについているハンマーパーツがガシャン! と後ろに動く。
「だあああああああああああああああああああッ!」
そして、その右腕を心臓目掛けて放つ。
すると、右腕は鋭くフィーネの心臓の位置を捉え、貫く。
貫いた拳の先には、粉々に砕け散った木片があった。
哲学兵装『偽りの聖十字架片』である。
「……ありがとう。届いたわよ、あなたの胸の歌」
フィーネは優しい笑顔で響に言い、そして灰となって消えていった。
響は、苦い顔で「了子さん……」とつぶやきながら、貫いた拳を再度握りしめたのだった。
「ふんっ! せい!」
「どうしたのマリア! あなたの力はそんなものではないでしょう!?」
ナスターシャの触手とアームドギアの短剣をぶつかり合わせるマリア。
彼女の刃はなかなかナスターシャに届かないでいた。
「マム……!」
「マリア、あなたは優しい子……私を手に掛けるのをためらっているのでしょう。でも、私は一度死んだ身。ならば、あなたの手でもう一度私を眠らせなさい……!」
そう言いながらもナスターシャの体から生える触手攻撃は苛烈だ。
なかなかマリアを踏み込ませようとしない。
「マム……ええ、見せてあげるわマム、私の力をッ!」
だが、マリアはひるまなかった。
むしろ、マリアは前へ進んだ。触手の攻撃をあえて受けながら進んだのだ。
「私の覚悟……見せてあげるわ、マム!」
【SERE†NADE】
そして、マリアは駆けた。
短剣を長い刀身に変化させ、左腕に装備し、バーニアを拭かせてナスターシャへと駆けたのだ。
その勢いに、触手はすべて斬り伏せられ、ついにはナスターシャの心臓部分にあった木片を抉る。
そうして、二人の決着はついた。
「マム……ごめんなさい」
マリアは一筋の涙を流していた。それは、再び出会えたナスターシャを手に掛けた、苦しみの涙だった。
「マリア……あなたは、本当に優しい子ね。ありがとう……」
そう言い、ナスターシャは物言わぬ灰と化した。
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