ハーメルン
【完結】死灰の少女~ashes to ashes, dust to dust~
4.少女の正体
「それで、何か分かったかエルフナイン君」
アッシュがS.O.N.G.へと連れて行かれた後、彼女はエルフナインによって精密検査を受け、その結果の報告が今S.O.N.G.の司令室で行われていた。
その場には、響を始めとした装者全員も揃っている。
「はい、検査をした結果ですが、体の組成は殆ど人間と変わらない事が分かりました」
「殆ど……? なんだか奥歯にモノが詰まったような言い方ね」
言ったのはマリア・カデンツァヴナ・イヴだった。
彼女は口元に手を添えながら、画面に映し出されたアッシュのデータを見ている。
「戦闘記録を見せてもらったけれど、装者と対等に渡り合うほどの動きを見せるのは並の人間じゃ無理よね。そこは翼達の方がよく知っていると思うけれど」
「ああ。あの動きは明らかに私達装者に匹敵していた。司令のように特別に鍛えているのならともかく、普通の、しかも年端も行かない少女にあの動きは無理だろう」
「だよな。しかもアルカノイズみたいに物質の解剖までしやがった。やっぱり、何か秘密があるんだろ?」
翼に続いてクリスが聞く。
その言葉に、エルフナインは首を縦に振った。
「はい。これを見てください」
エルフナインはそう言って司令室の画面を操作する。
すると、今度はアッシュの胸部レントゲン写真が映し出された。
その写真に、一同は不思議そうな顔をする。
「これは……なんデス?」
「心臓に釘と……木の欠片の塊?」
見たものをそのままに口に出したのは暁切歌と月読調の二人だ。
二人が言うように、アッシュの心臓の部分には釘と木片が固まっていた。
「はい、そうです。これは釘と木片の塊が、彼女の心臓部分にあることを示しています」
「それじゃ、普通は死んじゃうよね……やっぱり特殊な人間なの? まるで……」
聞いたのは小日向未来である。彼女の視線は、隣にいる響に向いていた。
響はその視線を感じ、小さく頷く。
「うん……まるで、昔の私みたい。ガングニールの破片がこの胸にあった頃の、私と……」
「そうですね……みなさんの考えている通り、彼女は特殊な人間なようです。しかも、かなり……」
「どうしたのエルフナインちゃん。そんな顔して」
エルフナインが言葉を濁しながら難しい顔をしたのを響が疑問に思って聞く。
「ええ……実は僕もまだ信じられないんですが、実は彼女は――」
そうしてエルフナインが話し始めようとした、そのときだった。
「――そこから先は、私本人の口から説明する」
司令室にそう言って、アッシュ本人が現れたのだ。
「アッシュちゃん!」
響が駆け寄る。
他の装者達は驚いた顔を見せる。
「響、来ちゃった」
アッシュは響に対し少し照れたような笑顔になる。
「おいおい大丈夫なのかここに来て」
「別に。ちゃんと監視下にあるなら基地内なある程度自由に動いてもいいとは言われているし」
逆にクリスには少し突き放した言い方をした。
どうやら響とそれ以外に対し感情に温度差があるらしい。
「さっきから変な人がずっと私のこと監視してるのも知ってる。なんとなく、凄く強いのも分かる」
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