空の戦い
ウィル・クラウネス。
パッと見では、普通の腕とは何ら変わりない義手と、ほぼ一体化している杖を振るい、腰ほどまで伸びた銀髪を風に靡かせる、『学園最強』の女。
一見、好戦的にすら見える隻眼。
魔法と魔術、どちらも巧みに扱い──しかし、その全てを近接戦闘に注ぎ込んだようなスタイルを好む、自称剣士。
アルティス魔法魔術学園の八年生であり、恐らくは、史上初の迷宮単独踏破を成し遂げた、『学園最速』。
生まれ持った先天性魔術属性《加速》により、地上より空中の方がよっぽど厄介だと評される、魔法魔術師────そんな、ウィル・クラウネスが、
「ク、クハハ」
と。
「クハッ、クハハ、クハハハハハッ!」
と。
「クハハハハハハハハハハハハハハハッッ!」
と──さながら悪の親玉みたいな高笑いを発しながら、上空を駆け抜ける。
ビッタリと、こちらの背後にくっつくように。
つまり俺は──俺達は今、彼女に追いかけられていた。
「おいおいおいおいおい! 逃げてばっかじゃあ、つまらねぇじゃあねぇーかぁ!?」
見せびらかすように展開された複数の魔法陣から、雨あられのように射撃魔法を飛ばしてきながら、彼女は叫ぶ。
先日、レア先輩に秒でボコされたくせに、その怪我はきっちりと治されたらしい。
特別、心が折れたという訳でもなさそうで、むしろ昨日よりずっと楽しそうだ。
剣士名乗るなら、空戦でも接近戦してこいや……とか思ってしまうのは、仕方がないことだろう。
「──葛籠織、迎撃いけるか!?」
「いけっ、るけど~、ずっとこれだったら~、耐えられないよ~?」
「わかっ、てる……けどっ」
技術的な問題で、振り切れる気がしない──とは思うだけにして、俺の背中にしがみつきながら杖を振るう葛籠織ごと、クラウネス先輩を見る。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/9
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク