ハーメルン
魔王vsパワードスーツ/魔王に滅ぼされかけた異世界の人々、26世紀のパワードスーツを召喚して反撃に出る
1.5.税金の使い途
王都からやや離れた地下の、洞窟。
ファリーハは、異世界の鎧とその着装者たちを連れてそこに来ていた。
歴史的な経緯で、ビョーザ回廊と呼ばれている場所だ。
「殿下……ここが、僕たちの祖先が最初にこの島を訪れた場所なんですね」
白い鎧の中から、アケウが尋ねる。
「そうです。150年前のインヘリト王国の先遣隊は、遷都候補地を探して、ここに現れたそうです」
照明器具などはないが、ディゼムの着ている黒い鎧が照明を提供していた。
左右の肩口の装甲の一部が投光機に変化し、発光しているのだ。
2条の光に照らされながら、一行は足場の悪い洞窟を進んでいく。
「こんなトコにあんですか、その魔術紋様の跡っての」
黒い鎧の中から、ディゼムが尋ねた。
それに答えて、ファリーハ。
「記録の上では存在します。まず、150年前……我々の祖先は、大陸の端まで追い詰められていました。
彼らは船や転移の魔術紋様を使用して、逃げるための土地を探しました。
その時偶然、一人の魔術師が発見したのが、当時無人だったこの島、ノヴァン・インヘリト。
そして、この洞窟が、その時最初に出た場所だったというわけです」
黒い鎧のプルイナが、周囲の状況を観察して評価する。
『床も壁も、岩肌がむき出しにも関わらず、高さや幅などは一定ですね。複数人が並んで歩ける程度の幅に整備されている……ここは洞窟のように見えますが、人工の通路でもあるようです』
「初めての転移で島の地下に出てしまった魔術師が、地上に出るために魔術で掘ったもと記録されています。なので、天然の洞窟とは岩肌の様子がだいぶ違いますね」
そこまで語ると、ファリーハが足を止め、一行も立ち止まった。
「出発前に話しましたが、改めて。
あなた方には、ここに残っているであろう魔術紋様の痕跡を探してもらいます。
当時の魔術師が、有望な場所を見つけたと旧世界に報告しに帰った際に、この地下道のどこかに描いたものが残っているはずです。
その紋様を復元して解析すれば、我々が旧世界へ転移するための魔術紋様を再現することができる」
プルイナと、白い鎧のエクレルが、それに答える。
『断言はできませんが、やってみましょう』
『さほど深い洞窟ではないようだな。手前側と奥側で分担しよう。アケウ、我々は手前側だ』
「わかった」
『ディゼム、我々はもう少し進んだ地点から奥までです』
「おう」
黒い鎧、白い鎧の探知機能で10分ほども探すと、洞窟内は全て捜索できた。
だが、内壁にそれらしい痕跡は発見できなかった。
『塗料やそれに準ずる描画の痕跡は、発見できませんでした』
プルイナから結果を聞いたファリーハが、首をかしげる。
「普通、使用した魔術紋様は劣化こそすれ、完全に消え去ってしまうということはないはずですが……それも消してしまったのかも知れませんね」
黒い鎧から、プルイナが提案した。
『その代わりというべきものかは分かりませんが、最奥部の付近に別の空洞があるようです。魔術でこうした地下道を掘削することができるのならば、埋めてしまうことも可能なのでは?』
「! そこまで穴を開けることはできますか?」
[9]前話
[1]次
最初
最後
[5]目次
[3]栞
現在:1/7
[6]トップ
/
[8]マイページ
小説検索
/
ランキング
利用規約
/
FAQ
/
運営情報
取扱説明書
/
プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク