ハーメルン
魔王vsパワードスーツ/魔王に滅ぼされかけた異世界の人々、26世紀のパワードスーツを召喚して反撃に出る
1.7.通路の啓開
ビョーザ回廊が爆破されたという知らせは、まず回廊の警備をしていた陸軍の兵士から、遠話の魔術を使って王都に伝えられた。
そして王都から同様に、遠話でファリーハに。
爆破の音ともに、通路が崩れ落ちたのだという。
幸い内部に人員は残っていなかったようだが、岩石の崩落で魔術紋様への通路が完全に塞がれてしまっていた。
急行する馬車の中で、ファリーハは歯噛みした。
(なぜまたこんなことが……着装者2人を爆殺しようとした犯人もわかってないというのに……!)
犯人、あるいは犯行組織が同じだと仮定すれば、目的は鎧を奪うことなどではなく、旧世界奪還計画の妨害だと考えられた。
(この際だから、仮定するだけなら軍や魔術省以外の候補も考えないと。政府で計画に反対してるのは……主計省くらいか。でも爆破なんてするかなぁ)
主計省とは、王国の財政や税務を司る部門だ。
莫大な出費になる上、収入が保証できないという旧世界奪還計画には反対しており、魔術省の申請した予算にも横槍を入れてくる。
ファリーハの苦手とする省だった。
だが、爆弾を個人めがけて精密に転送するような魔術や、洞窟を崩して通行不能にするような多量の爆薬(あるいは魔術)を準備できるような環境ではない。
(と、なると……やっぱり暴力組織になるのかな?)
保安警察がそうした動きを掴んでいれば王族の誰かがファリーハに教えてくるはずだが、そうしたことは未だにない。
(まさか、王室の誰かも関与している……? しかも1人じゃないとしたら、私に情報が回ってこないのは……私が孤立してるっていう可能性も……!?)
現状の彼女の認識では、それもあり得ないとは言い切れないことだった。
段取りや根回しは慎重にやっていると考えたかったが、彼女とほかの王族との間には温度差があるような気もしてきた。
予定があって動けなかった王族以外は全員、召喚の儀式の場で魔王(の“影”)の脅威を目の当たりにしているはずなのだが、そこで鎧が魔王の“影”を撃破してしまったため、楽観論に傾いた可能性も否定はできない。
あるいは、既に王国に潜入している悪魔による工作――
(……キリがない)
陥ってしまえば、疑心暗鬼には際限がなかった。
考えているうちに、ビョーザ回廊付近へと馬車が到着する。
車内から見た限りでも、入り口がかろうじて原形をとどめている程度。
洞窟の奥の方は、破砕された岩石で完全に埋まってしまっていた。
馬車から降りて眺めると、それはいっそう実感的となる。
「何てことを……」
うめく彼女の後ろから、黒い鎧――プルイナが声をかけた。
女性型の音声を周囲に聞かせないよう、音量を絞っている。
『ファリーハ、我々が瓦礫を撤去しましょう。長く見積もっても、半日もあれば排除できます』
「……頼みます。明日から計画の打ち合わせをする予定でしたが……これはいよいよ、計画を妨害する犯人を突き止めなくてはなりませんね。証拠になりそうなものを集めておくことはできますか?」
白い鎧――エクレルが、プルイナと同様に音量を絞って答える。
『可能だ。動機は不明だが、これ以上我々の邪魔するのであれば、もはや容認できん』
そこに、黒い鎧の中からディゼムがうめく。
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