ハーメルン
魔王vsパワードスーツ/魔王に滅ぼされかけた異世界の人々、26世紀のパワードスーツを召喚して反撃に出る
1.9.血文字の紋様
図書館で、2領の鎧を護衛の魔術師2人に預けて別れた。
それが、甘かったのだろう。
客車にファリーハだけを乗せた馬車は、図書館を出て、隣接する官庁街を走っていた。
魔術省までは、さほど離れていない。
ふと気になって、外を眺めてみる。
(何だか、いつもより軍の自動車が多いような……)
そう考えていると、馬車が急停止した。
「うっ!?」
座席ベルトを締めていても投げ出されそうになる、急減速。
御者が客車のブレーキをかけたのだろう。
だが原因を問いただす前に、外から客車の扉が開かれた。
「ファリーハ王女殿下」
彼女の名を呼んだのは、制帽を被った軍人だった。
(海軍……!)
兵士ではなく、将校のようだった。
右手には拳銃を握っている。
彼女に向けてこそいないが、それでも威圧感はあった。
「恐縮ですが、お越し願います。これ以上は馬車が進めないようですので」
「…………!」
彼の背後に停まっている自動車を見て、状況を理解する。
海軍の自動車が複数、彼女の乗った馬車を取り囲んでいた。
まさか、この隙を狙ってきたというのか。
(海軍……アケウたちを殺そうとしたのも、ビョーザ回廊を爆破したのも……!?)
そう考えると、反抗的な心持ちが強まってくる。
このまま連行されたくはない。
「……っ!!」
彼女は将校の青年を思い切り突き飛ばし、客車から飛び降りて走った。
攻撃用の魔術を念じると、ファリーハの血液が活性化し、魔術の効果が世界に顕れる。
「通してもらいます!」
その呪文を引き金にして、衝撃波が発生した。
海兵たちの乗っていた自動車が横転し、包囲網に隙ができた。
そこを目がけて、走る。
走りづらい靴だったが、我慢して走る。
ファリーハの動きは、将校たちにも予想外だったようだ。
このまま、魔術省に連絡を取って逃げ切る!
だが、
「そこまでです!」
襟を掴まれ、バランスを崩す。
そのまま後ろ手をひねり上げられ、膝を突かされた。
「あっ……!」
「失礼を!」
女の海兵が、彼女に手錠をかける。
そのまま、服の上から何枚も札を貼られた。
魔力を使用前に発散させてしまう効果を持つ、魔術紋様の描かれた札だった。
何十枚貼られたのか、いくら魔術を使おうと念じてみても、魔力が集中しない。
魔術が使えなくては、彼女の体力では逃げることすらできなかった。
見れば、ファリーハを取り押さえていた海兵は、全員が女らしい。
彼女たちの一人が、将校に敬礼する。
「大尉殿、失礼ながら王女殿下、お迎えする準備が整いました!」
「ご苦労。お手荷物をお預かりしておけ。そのあと、車で師団長殿の下までお連れしろ」
「お手荷物をお預かりしたのち、車で師団長殿の下までお連れします!」
「殿下、またも失礼!」
女兵士たちが、ファリーハの手荷物を没収し、軽度のボディチェックを行った。
そのまま彼女を、2人で両脇から固めて、歩かせる。
口を塞がれることはなかったため、大尉と呼ばれた将校に問う。
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