ハーメルン
湖の求道者
閑話 行き着く先は

 消えてゆく意識の中で、ランスロットは思考の渦に呑まれていた。

 果たしてあの戦いは自分の勝利と言えるだろうか。
 成る程、後一振り出来れば確実に勝利出来ただろう。幕引きの斬撃を使うまでもない。

 それにしても喜ばしかった。
 長年追い求めていたものに手が届いたのだ。喜ばないわけがない。

 この、己の武の極致さえあれば、あの死徒二十七祖の第五位すら屠れるかもしれない。
 そんな領域に辿り着いたのだ。
 何れ程の命を抱えてようとも、仮に死しても転生できる手段があろうとも、ソレが仮に手足だろうと神秘的な繋がりさえあれば確実に斬り伏せることができる。

 正しく自分が求めた、「あらゆる障害を一刀の元に斬り伏せる」という目標を達成することができたのだ。

 星すら斬れた。まぁお蔭でこの様らしいのだが。

 上も下も解らない、背景描写すら碌な表現が出来ず、しかし笑いが止まらない。

 愉快だ! はは、はははははははははははははははははははははははは!!!!










 ──────アホか。


 呆れて思わず笑ってしまう。
 必殺技が出来て悦に浸るとか、中学生か。
 自分の幼稚さに呆れてモノも言えない。
 必殺技? あらゆる障害を一刀の元に斬り伏せる技?







 そんなの当たり前だろう。








 剣士に、剣に必殺は当然。
 業とは、一振り一振りに宿る基本や積み重ねこそが揃って漸くのモノ。

 基本こそ奥義という言葉を知らんのか俺は。
 つまり型はあれど技など本来存在しないのだ。
 故に真の剣士とは、振るう刃全てが必殺でなければならない。

 
 振るう剣に牽制など、それは弱者の武術。
 別にソレを悪とは言わない。何故なら武術とは、生まれながらの絶対強者に対するコンプレックスによって生み出された業。

 しかしソレでは何処ぞの農民と何ら変わらない。
 そして自分は、その農民には持ち得ないものを持っている。

 故に俺の到達点とは、その農民とは違う答えでなければならない。でなければ、持ち得なかったその農民に対する侮辱なのだから。
 今の自分は、言ってしまえばレベル100まで上がったが、自分にはその先のレベル101以上があると知ったゲーマーの様なもの。

 故に寄越せ。
 時間を、修練を、獲物を、闘争を。
 何一つ自分は満足していない。

 その問い掛けに答えるように、ランスロットの眼前に六つの扉が顕れる。
 勿論、それはランスロットが認識しやすいように情報化されたもの。
 この場に来たもの全てに、その扉が顕れる訳ではない。これはあくまで比喩なのだから。

 六つの扉の内、四つは開かれている。
 その四つの奥には、否。その開かれていない五つ目の扉も、ランスロットが望むモノへの扉ではないとランスロットは本能的に理解した。

 故に向かうは六つの目の扉。
 その扉は鎖や錠前等で、固く閉ざされている。
 お前に、ランスロットにはこの扉を開く権利は無いと言うように。

[9]前書き [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析