ハーメルン
稲妻の料理は毒舌な少女達と共に
竜の過ち

 俺が最初にリサを知ったのは電話が来る少し前からあこに話を聞いていた。
 今井リサ、Roseliaのベーシストであり、慈愛の女神と言われるほど面倒見がいい。だが、彼女の見た目からよく近寄りがたいと思う人がいる。そんな誤解を招く少女だと。
 そして、しばらくして、そいつから電話が来た。先生に頼まれたからと言って律儀に連絡をしてくるあたりいい奴なんだろうなと思っていた。
 遅刻したけど。
 その後俺は彼女に礼を言ったが何かがおかしい。そう、彼女は俺が反省文書くのを待っていたのだ。退屈凌ぎに話すとしても、彼女には複数人友達がいる。
 普通なら礼を言ったら終わるはずなのに、リサは何故か俺についてきて話をしてくれた。
 その後はなし崩しに料理の話をして、俺が母さんから学んだレシピとかを教えておいた。真剣にメモを取っている事は凄いと思う。
 そんなこんなでしばらく交流を続けていたある日、彼女が久しぶりに元気を無くして俺の席の隣に来た。

「ルナと少しいざこざがあったんだ」

 ルナ、というのは今井ルナでリサの弟らしい。彼がリサ達に音楽で置いて行かれたから別のサポートで幼馴染として仲良くなりたい。でも、リサとしてはそれが足枷ではないかと俺に言ってきた。
 まぁ、俺の答えは当然。

「……飯行こう。昼休みだし、弁当分けてやるよ」

 何も言わなかったのだ。理由なんて俺が関係者じゃない以上、リサの家族や幼馴染でない以上口は出せない。ただそれだけだった。逃げの一手、だが、俺にとっては最善手だった。
 だから俺はリサに弁当を分けて、ただ相談とは全く関係ない話をした。
 普通なら真面目に聞けと怒るだろう。相談に乗れと言ってくるだろう。
 だが、リサは一言。

「……ありがとう、竜」

 そう言ってきたのだ。俺には力が、考えが足りなかっただけなのに。
 それから俺はリサをよく気にかけた。あこやましろも気にかけたつもりだったが、当人達からはリサに力を注いでると思われていたのだ。
 その結果、俺はあことましろを振ることになったのだが。
 それでも、俺はリサの力になりたいと思ってしまった。恋だか愛だか分からんけども、彼女に暗い顔は似合わないなんて本気で思ったのだ。
 気がついたらリサが好きになっていたらしい。
 だから……俺は。

「……」
「り……竜」
「ごめん……リサ。これ被って今は逃げてくれ……」

 敵を、排除(殴って)してしまった。

 ♪♪♪ 

 そもそもの発端は、リサがライブ後にバンド練習が休みになり、俺の家に来ると言ったところから始まった。
 俺は家で料理を作って待っていたが、彼女は時間になっても来ない。
 リサは時間にうるさい方であり、真面目な方である。最初は準備に時間がかかっているのかと思ったが、後5分で着くという連絡が来てから10分ほど経っているので、俺は外に向かった。迎えに行かないと雨が降る可能性もあった天気だから。
 しばらく歩いて、時には走って、そこで見たのは、男3人に囲まれたリサの姿。しかも、1人はリサの腕を掴んで押さえつけていた。
 それを見た瞬間に母さんの話が俺の中を駆け巡った。俺は産まれてないのに、母さんのその時を知らないのに、それでも俺がリサの元に行かないとどうなるか、そう考えると一気に反吐が出るほど吐き気がして……

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