17.友人の目標
雫達が『ブランシュ』に襲われた翌日。
登校してすぐ咲宗は生徒会室に顔を出す。
そこには真由美、摩利、克人の三巨頭がすでに顔を揃えていた。
「おはようございます。遅くなり申し訳ありません」
「おはよう、風火奈くん。大丈夫よ。私達もさっき来たばっかりだから」
真由美は柔らかい笑みで咲宗の謝罪を受け入れる。しかし直後顔を引き締めて、
「それで早速本題なんだけど……昨日の報告は事実かしら?」
咲宗はその言葉に頷き、
「残念ながら……。ブランシュの構成員がアンティナイトを多数所有しています。そのことからブランシュの背後には【大亜連合】がいるのは間違いないと思われます」
大亜細亜連合―通称【大亜連合】。
東アジア大陸国家で、各国に対して様々な工作を行っており、特に日本を標的にしている。
他国を狙う理由の1つには過去の内部分裂により魔法のノウハウをほぼ焼失したことが挙げられている。
「となると……風火奈の言う通り、特別閲覧室のデータが目的の可能性はかなり高いな」
「そうだな」
「でも、そこに生徒を利用されるのは厄介ね……。下手に警察の介入を許せば、生徒達が逮捕されてしまう可能性があるわ」
「そうなれば、そいつらの魔法師としての未来は閉ざされるどころか、本当に逆恨みでテロリストの仲間になるかもしれないな」
「ええ。そんなことになったら、第一高校はもちろん魔法科高校全体が大ダメージを負うわ」
「……それも奴らは狙っているのだろう。失敗しようが成功しようが、この国の魔法技術や魔法師社会を貶めるきっかけになる」
克人の言葉に真由美と摩利は顔を顰める。
「じゃあ十師族が動くべき?」
「いや、警察を頭ごなしに無視してブランシュを潰せば、流石に政府も黙ってはいまい。表向きには称賛しても、魔法協会を通して抗議や何らかのペナルティーを課せられる可能性は高い。こっちから先に仕掛けるのはリスクが高いと言わざるを得ん」
「それに七草家、十文字家はブランシュも大亜連合も警戒しているはずです。下手に動きを見せれば、すぐさま雲隠れして他校に狙いを変えるでしょう。大亜連合はブランシュをトカゲの尻尾切り扱いしても大して懐は痛みませんから」
「……じゃあ結局私達に出来ることはあまりないと言うことか?」
「いえ、むしろ先輩方にしか出来ないことがあります」
断言する咲宗に、真由美は首を傾げ、克人は眉を顰めて訝しむ。
「私達にしか出来ないこと?」
「ブランシュの作戦の肝は『二科生の不満』です。そして、その不満の原因のほとんどは生徒達の勘違いと思い込みと推測しています」
雫とほのか達にも話した通り、第一高校における明確な差別とは『生徒会の役員指名』、そして『教職員の有無』だけである。
その他の生徒達が感じている差別感は、第一高校に限らず高校であれば良くある話ではあるし、ただ単純に生徒達が勝手に感じていることである。
もちろん、理由に魔法実技によるクラス分けが大きく影響しているのは否定しないが。
「なので、先輩方……特に七草生徒会長にはその勘違いを明確に否定する場を用意してもらい、二科生達の訴え全てに反論して頂きたい」
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