ハーメルン
White and white(PSYCHO-PASS)
orchid
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――同日 午後15時
「…………」
舞白が浮かない顔で外の景色を眺めていた。高層階の病室から見える景色は何だか素っ気ない。真っ青に広がる空は気持ちのいいはずなのに、自分の気分は上がる気配がない。
あれから5日が経過したとはいえ殴られた目元も腫れは未だに引いていなかった。体の節々は痛むし、嫌な記憶――
「――っ?」
そんな思いにふけていた時。病室の扉から人の気配を感じる。すると控えめなノック音が聞こえると舞白は声を上げた。
まさか宜野座では無いだろう。恐らく本人も察して病院には来ないだろうから。とするならばこの事態を知っている友人――
「……咲良?入りなよ。」
咲良しか有り得ない。
舞白は扉に言葉を放ち、開いた扉の先の人物に微かな笑みを向けた。
「――舞白。」
綺麗な花束を持って名を呼ぶのは咲良。自宅療養と聞いていたが居てもたってもいられなくなり会いに来たのだろう。一般面会解放日は今日の午後からだった。
咲良は自身の傷も癒えていないにも関わらず、舞白の為にと両親を説得し、なんとか家を抜け出してやって来た。
少女の顔は暗く虚ろだ。心做しか少し痩せた気もする。
「咲良。来てくれた…ッ…痛…」
「舞白!」
ベッドから体を起こす舞白。しかし体を無理に動かしたからか術後の腹部が痛み、反射的に手を腹部に添える。それを目の前に、咲良は慌てて舞白に近寄り背中にそっと手を当てた。
「大丈夫?…ナースコール…っ…」
「…っ大丈夫」
ナースコールに触れる咲良の手を掴み首を振る。そして痛みに耐えつつも笑顔を向ければ"大丈夫、大丈夫"と深呼吸するのだった。
咲良の手は震えていた。舞白はその手を強く握り、親友を安心させようと小さく振るう。
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病室に広がる花の甘い匂い。
咲良が見舞いに持ってきた花はホログラムではなく本物の花だった。本物の花束を貰うのはいつぶりだろうか。一昔前、兄が贈ってくれたっきりだろう。
「わざわざお花までありがとう。しかも本物のお花…いい香り…」
「ママが持たせてくれたんだよ。…パパもママもお見舞いに行くってうるさくて…だけど私は2人で会いたかったから。」
「また今度咲良の家に遊びに行かせて?お礼もしたいし。」
「うん!2人とも喜ぶと思う。弟も――」
いつもと変わらない普段通りの会話、2人の様子。なんら変わらない舞白とは真逆に咲良の表情はどこか暗く、何かを抱え込んでいる様にも感じてしまう。
時たま泳ぐ視線、歪む口元、嘘を覆い隠すような微細な表情。舞白は見逃さない。
「――舞白。あのね……、」
「ん?何?」
「……ごめんなさい。私のせいだから…」
「………」
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