あるアオい休日
居候先の家族がいない連休、少なくとも今日明日は二人きり。
さぁ、どうしようか。どうしようか、でもないな。部活も無い予定も無い、掛け値なしのお休み。
そんな時間を大喜くんと、二人きりで過ごす。これはなかなか、楽しいかもしれない。
向こうがどう思うかは、知らないけどさ。
――いやまあ、嫌がってはいないんだろうな。何だかんだとぼやきつつ、言うことは聞いてくれるから。
さて、楽しい時間の始まりだ。
大喜くんは私が好きだ、と知ったのは少し前の事。こんなワンパクでたくましい子を好きになるとか、大喜くんはちょっと変わった子なんだなーと思ったものだ。色恋沙汰とは無縁で生きてきた私にはなかなか分からない話だけど、まあ良いかなーと。大喜くんは可愛いし努力家で、好感を持てる子だし。
だからそう、その内告白でもしてくるのだと思ってはいたのだけれど。
思ってはいたのだけれど。
いたのだけれど、……うん。
大喜くんは、待てど暮らせどなかなか言ってこない。チラチラこっちを伺っていたりする辺り、私を好きなのは確かなようだが行動に表さない。
そうなると私としてもちょっと苛ついてくる、理不尽かもしれないけどさ。こっちから告白しても良いんだけど、それで日和られたら私が惨めだ。
どうしたものかと思いながら過ごしていた日々、それに終止符を打ったのは私の一手だった。
「なんかもう、良いや」
このまま待ってても千日手だし、力尽くで行こう。押して押して押し通る、私はそういう女だから。
ジャンプを借りるふりをして部屋に行き、そして私は――大喜くんの肩を捕まえてベッドに押し倒し、そのまま唇を奪ってしまったのだ。
初めてのキス、それは想像よりは艶かしい。粘膜が触れあう、という行為だから当然なのだろうけど。
窒息しそうな程に大喜くんの口に吸い付き、舌は歯列を押し広げて内側へ。大喜くんの中に、私の身体が入り込んでいく。それは不思議ででも、心地いい。
抵抗しようとする大喜くんを両腕で制圧し、私はキスを続けていく。大喜くんはもう、誰かとキスしたことがあるのだろうか。例えあったとしても、このキスで上書きしてあげる。そう思いながら。
どれくらい、そうしていただろうか。
やがて大喜くんが大人しくなった頃、ようやく私は唇を離す。
ゆっくりと遠ざかっていく唇と唇、そこを結ぶように白く泡立った唾液が糸を引いて見えた。
「あー……、っ」
大喜くんは呆然とした顔のまま固まって、身じろぎもしない。いや、出来ないのか。私は服を緩めながら、もう一度キスをする。今度は頬へ、小さく軽く。
「ねえ、大喜くん。……大喜くんは、嫌かな。私とは、したくないかな」
そっと囁きかけ、揺さぶる。大喜くんの心を、震わせる。
大事なのは、引きずり出す事。大喜くんが隠し続けている本心を、暴き出す事。
私に向けている感情、それを明確にしてくれればいい。きっとそれは、私の考え通りなんだけど。
そして心の中心に、楔を打つ。逃げ場の無い状況へと持っていき、心を裸にする為に。
「大喜くんは私を、どう思っていますか」
我ながら卑怯な手を遣うもんだ、とは思う。答えは一つしかない、それ以外は聞かない。大喜くんに選択の余地なんか、与えない。まったく、私と来たら。
何処までも、酷い女だ。
「――……です。好き、……です。でも、こんなの……!」
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